2017.01.21「天皇家の弔い方」

おくりびとからのメッセージ

武田
武田

今日はどういうお話になりますか?

篠原
篠原

本日は「天皇家の弔い」についてお話しをしたいと思っています。

武田
武田

今、生前退位で色々と論議を呼んでいますけども。

篠原
篠原

そうですね。天皇家の弔いについて、時代モノでも色々な描かれ方をしますが、実は、かなり秘密のベールに包まれているところが多くありまして。

武田
武田

そうなんですか。

篠原
篠原

これを紐解いていきますと、ある時代では現代の密葬のような形で送られていた時代も数百年あったり。

そんな中で、様々な歴史書物や宮内庁の資料等から、天皇家の弔いというのはどういう形で行われていたのかを紹介していきたいと思います。

武田
武田

よろしくお願いします。

篠原
篠原

飛鳥時代から遡って、今日(こんにち)はどういう形で行われているのかをご紹介したいと思います。まず、天皇家は、土葬なのか、火葬なのか、意外と知られていないと思うのですが。

武田
武田

なるほど。昔は土葬なんじゃないですか?昔はさ、仁徳天皇陵とかデッカイのがあったじゃないですか。

篠原
篠原

そうですね、古墳の時代ですね。やはり土葬のイメージが強いと思います。実は、宮内庁が正式発表をしている数字では、神話の時代も含めて歴代天皇を122人といたしまして、その内の73人が土葬にて弔われて。

武田
武田

お、ということは、火葬もかなりいらっしゃるってこと?

篠原
篠原

そうですね、火葬をされた方が41名だったそうです。

武田
武田

へえ~。

篠原
篠原

そして、歴史上不明とされている人が8人いるようですが。つまり、火葬されている方もいる訳ですね。古代の日本では、やはり土葬が主流ですので、飛鳥時代やそれ以前では、土葬で弔われていたということで、土葬の割合が多いですが。

武田
武田

そうですね。

篠原
篠原

それ以降、大陸の方から仏教の伝来と共に要素が変わってまいりまして、その仏教の影響を受けて、一番最初に火葬にて弔われたといわれている天皇が、703年に崩御された持統天皇でして。

武田
武田

持統天皇、春過ぎてうんぬんだったな(笑)

篠原
篠原

この天皇は、今の言葉で言うと女系天皇ですね。

武田
武田

女性の天皇でしたよね。

篠原
篠原

この持統天皇が、初めて火葬された天皇と言われています。それ以降は、火葬と土葬、それぞれ行っていたようですが、室町時代以降に火葬がほぼ定着をして、室町以降では天皇も火葬が主流だったそうです。

武田
武田

でも、民間ではそうじゃなかったでしょう?

篠原
篠原

仰る通りです。民間はつい近現代まで、ずっと土葬でしたから。

武田
武田

私も、土葬のお葬式を小さい頃に体験しましたからねぇ。

篠原
篠原

昭和の時代まで、国民の中では土葬で行われていたのですが、大陸から入ってきた火葬というのは、ある意味では懇ろな弔い方といいますか、より丁寧に受け止められている中で、貴族などが先に火葬で弔われるようになって、その時代の天皇も火葬を選択するということがあったようですね。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

近現代の天皇は火葬で弔われておりますが、江戸時代の初期1654年頃、後光明天皇のご葬儀から、改めて土葬が復活してきて。以降、幕末の孝明天皇の時代に、実質上火葬が廃止されて。

武田
武田

そういうことなんですね。

篠原
篠原

天皇の送り方として火葬が廃止されて、土葬をされてきたんですね。

そして現代はどうかと言いますと、実は、2013年の11月14日に両陛下のお気持ちということで、宮内庁からの発表がございまして、お墓とお葬式の在り方について、両陛下のお気持ちが宮内庁から出されたんです。

武田
武田

うん。

篠原
篠原

その中で、葬儀についてはどうお考えになるかという事で、火葬が望ましいのではないかというお気持ちを発表されておりまして。これで平成の世でございますけれども、改めて火葬で弔われるというご希望を持っていらっしゃるというのが今の現状なんですね。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

先程のお話は、天皇陛下がどう弔われたのかという歴史でしたが、他によく知られていない話としては、天皇家のお葬式というのは、仏式なのか神式なのかというところで。

武田
武田

神式だと思うのだけれども、そうでもないのかね?

篠原
篠原

神式には、火葬についての解釈がそもそも存在していなくて。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

神道の元々の考えとしては、魂を霊璽へ移す御霊移しを行って身体を大地へ還す土葬という流れですが。火葬というのは明らかに大陸から入ってきた習慣で、これが根付いたのは浄土真宗の…。

武田
武田

親鸞(しんらん)だな。

篠原
篠原

この親鸞さんの時代、後の方かと思うのですが、「白骨の御文章」という有名な文章の一節の中で、白骨化することが成仏の証であると。

武田
武田

そんな時代もあった訳?

篠原
篠原

そうなんです。そうして、火葬は1つの成仏の証になるという捉え方が広まっていくのですが。先程、天皇の中で火葬された方がいらっしゃったというお話がありましたが、その解釈でいくと、これは仏式で行われたお葬式ということになりますね。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

天皇のお葬式は神式、神道だろうという考えが広く一般化してるのですが、実際の歴史を見ていくと、室町時代以降にお寺で行われたお葬式というのもあって。

武田
武田

ほぉ。

篠原
篠原

先程、武田先生が仰られたように、天皇家のお墓というと古墳で、土葬して副葬品を様々収めたのですが。

武田
武田

そういうイメージだよね。

篠原
篠原

実は室町からそれ以降のお寺の境内に、いわゆる石塔の形でお墓を持っていらっしゃる天皇という方も多数いらっしゃるのですね。具体的には、756年に亡くなられた方で、聖武天皇。

武田
武田

東大寺作った人ですね、大きな仏像を作ったね。

篠原
篠原

そうですね、非常に病が流行った中で仏像を建立された方です。聖武天皇以降から幕末の孝明天皇までの間、この期間は仏式のお葬式で弔われたようです。

武田
武田

大仏作るんだから、当然仏式だろうね。

篠原
篠原

ということで、実は我々が知らない歴史というのが結構あって、様々な弔われ方があって、密葬的に行われていた時代もあったので、資料も中々残っていない時代もあるということで。

武田
武田

そういうことかぁ。

篠原
篠原

今日現在は神式の形で行われていますので、実は、飛鳥時代に遡って、当時の葬送を現在も踏襲しているのですね。

武田
武田

なるほど。世界広しといえども、飛鳥時代まで遡ってやるのは日本だけだろうね(笑)

篠原
篠原

そうですよね。千年以上歴史のある葬法ですが。

武田
武田

凄いことだよなぁ。

篠原
篠原

飛鳥時代に天皇家で亡くなった方がいると、いわゆる殯宮(ひんきゅう)といいまして、殯宮(もがりのみや)ですね。

武田
武田

はいはい。

篠原
篠原

当時は医療の発達していない時代なので、ある時起きなくなるんですよね。しかし、それが死であるかどうかの確証が持てないので、別の所へ移してしばらく生きてる方と同じように接した訳です。

これは殯宮日供の儀(ひんきゅうにっくのぎ)と言って、殯宮に毎日御供物を届ける儀ですが、これも近現代でまだ行われているのですが。

武田
武田

なるほどねぇ。

篠原
篠原

飛鳥時代は、1年間遺体に対して、毎日御供物を届けて。

武田
武田

だから、死と認めていない訳ですよね。

篠原
篠原

はい。その期間ずっと仕え続けるのが飛鳥時代の習わしでした。当時はもちろん土葬で、古墳だったのですが、その当時も、最初に殯宮に移すというところから始まって、徐々に経過を見ていったわけです。天皇家の墓は、陵(みささぎ)と呼ぶのですが。

武田
武田

えぇ。

篠原
篠原

この陵の地鎮祭が催されて、先にお墓を整えてから葬儀の段取りに入っていくというのが古代のやり方だったようです。

武田
武田

現在も踏襲されているんですか?

篠原
篠原

現在も、日数は非常に短くなっているのですが、20日間などの期間で行われているようです。

武田
武田

ほぉ。

篠原
篠原

飛鳥時代は、我々で言うところの納棺のような、御舟入りという儀があったり、出棺のような、轜車発引の儀(じしゃはついんのぎ)といったようなものがあって。それが踏襲されて、現在も行われているという。

武田
武田

なるほどねえ。そういうことは、我々知りませんね。

篠原
篠原

そうだったのか、という事が結構ありますよね。

武田
武田

こういうお話もあります。我々が例えば聖武天皇とか言っているのは、その天皇様がご健在の頃はそういう称号はないのでありました。これは諡(おくりな)でございます。

篠原
篠原

そうですね。

武田
武田

亡くなった後に付けられた名前を我々は聖武天皇とか言っているんですよ。このあたりもまた知られてないことなんだけれどもね。

篠原
篠原

諡は、仏教と混じり合って現在の戒名が繋がっていったなんて言われますし。

武田
武田

あと、徳という字がついた天皇というのは大体無念の内に亡くなった方が殆どだというのもある。だから徳というのを付けることによって、怨霊を沈めるというのもあったみたいですよ。

ということで、今日は知られていない天皇家の弔いについてのお話でした。

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