2020.12.19「スピリチュアルペイン」

おくりびとからのメッセージ

武田
武田

この前、横山さんをお招きしましての講演会がありましたね。だいぶ良かったという反響もいただいたようですね。いかがでしたか、イベントは?

篠原
篠原

はい。横山先生に「発酵の免疫力」というテーマでお話いただいたのですが、大変盛況で、用意していた席も満席で、お越しいただいた方も大変活発に質問をいただけました。

武田
武田

良かったねぇ!私の知り合いから、まだ席が空いてるかと言われたんだけど、ごめんなさい、今はこういうご時世だから詰めることできないのよってお断りしたんですよ(笑)

篠原
篠原

確かに、人数制限をしないといけないご時世なので。ちなみに、新たにオープンした東大屋店が、明日でちょうど一週間になるのですが、お陰様でお仕事のご依頼をいただきまして。

武田
武田

おぉ!良かったですね。

篠原
篠原

現在、二組さまにご利用いただいております。

武田
武田

そうですか。冬というのはどうしても亡くなる方が多いようですよね。

篠原
篠原

そうですね。例年9月~3月にかけて、寒くなってくる頃に亡くなる方が増えてくるのですが、実は、今年はコロナ禍の影響でかなり変わってきておりまして。

武田
武田

おっ、どう変わってきているんですか?

篠原
篠原

変調が見え始めたのが10月くらいからで、火葬場の利用率というものがありまして、例年冬場は80~100%になるのですが、これが今月12月に入ってから、稼働率が5割~7割という状況なんです。

武田
武田

どうしてなんだろう?

篠原
篠原

この間、全国にプラットフォームを持っている葬儀会社の方にインタビューしたところ、全国的に感染症由来の死因。例えば感染症から肺炎になってとか、もしくは病院では家族の面会などで本来はもっと人の行き来があるものですが、それが制限されましたよね。

武田
武田

ということは、感染症が減少しているということですか?コロナは増えているけれども、インフルエンザのような感染症が減ってきていると。

篠原
篠原

そういうことなんです。

武田
武田

面白い現象だねぇ!

篠原
篠原

インフルエンザは例年7万人くらい感染が見受けられるそうですが、それが千分の一くらいになってきているようですね。

武田
武田

これは、コロナ禍で喜んでいいのか分からないけど、面白い現象ではありますね。

篠原
篠原

こういったことは、多い年、少ない年があるものですが、とはいえ年間の数字で見るとちょっとずつ亡くなる方が増えているというのが例年あることですが、今年に関しては変わっていますね。

武田
武田

こういったことは、あまり報道されていないんですよね。でも、亡くなる人が減るんだから、これはいい話だよ。今、負の部分だけが報道されるような節がありますが。まぁ、コロナのお陰と言っていいのか分かりませんが、今インフルエンザが減っているという事実があるということですよね?

篠原
篠原

はい。

武田
武田

で、今日はスピリチュアル…なんですか?

篠原
篠原

「スピリチュアルペイン」というのが今日のテーマです。

武田
武田

これは直訳すると、霊的な…苦痛?(笑)

篠原
篠原

その通りです。精神や霊的な痛みというのが、このスピリチュアルペイン。これも報道されることがないような話ですが、よくこの番組で、太陽と死は直視できないという話をしながら死というのを真正面から受け止める話を取り上げてきていますが、人は健康な時に死のことを忘れて生活していますよね。

武田
武田

確かにそうだよね。

篠原
篠原

しかし、死が間近に迫ってくるといくつか心に湧き上がってくる痛みというものがあります。例えば人生の意味って何だったんだろうとか、生きている目的って何だったんだろうといったような、過去の出来事への後悔から起きる痛みというのがスピリチュアルペインというのですが、これは長寿化してくる日本で最も多く語られなければいけないテーマだと思っておりまして。

武田
武田

確かにそうですね。

篠原
篠原

先に結論じみた話ですが、こうした霊的な、精神的な痛みというのは、いわゆる自分らしくない自分というのを生きていかなければならないということで生まれる苦痛と言われているんですよね。

武田
武田

うーん。

篠原
篠原

例えば、昔はふっくらしていたけれども、歳を取るごとに段々と食事の量が減ってきて、まるで自分ではないようだと感じてしまったり、過去にはできたことが、今の自分はできなくなってしまったということであったり。

武田
武田

私もそういったことはたくさんあるよ(笑)

篠原
篠原

歳とともにそうなっていくものですけれども。ここで、自分らしく生きられないと辛くなるということについて、自分らしく生きるとはどういうことなのか?

武田
武田

難しいんですよね、これが。

篠原
篠原

これは医学で、いわゆるターミナルケアとかの現場で語られ、研究されてきているテーマなんですが、自分らしく生きるというのは結局どういうことなんだという問いに対して、自分らしさを、例えば何か所有すること、何かができるということで見出していると、その何かが失われていく度に、同時に自分らしさを失ってしまうと言うんですよね。そして自分に価値を見出だせなくなってしまって、生きることが苦しくなる。

武田
武田

うーん。

篠原
篠原

なので、自分らしさというのは、自分自身の何かということではなくて、自分自身そのものに見出さないと、どうしても苦しみが生まれてしまうと。

武田
武田

確かにそうですよ。今まで愛していた家族だって、結局は歳とともに亡くなっていくわけだし。要するにそういうことだよな?

篠原
篠原

そうですね。自分らしさというのは、自分それ一人として心の葛藤が生まれますし、周囲との関係によってももたらされています。周囲でも、歳とともにパートナーやペットを失ってしまったり、色々な形で自分らしさを失っていく感覚が、どうしても歳とともに生まれてきます。では、向き合うにはどうしたらいいのか?ということなんですよね。

武田
武田

なるほど。難しい、哲学的な問題ですね…。

篠原
篠原

このスピリチュアルペインというのは、2000年初頭くらいからターミナルケアの現場で多く取り上げられてきているのですが、例えばWHOでもこのスピリチュアルペインの存在を認めて、そのケアを医療従事者の方が行っていく重要性を語っております。

武田
武田

ほぉ。

篠原
篠原

この、スピリチュアルペインに対するケアはどうするべきかという結論が出されているのですが、あるがままの自分を乗り切ると言っても、出来ないことも増えるし、生かされているような感覚に陥ってしまうことがあるのですが、そんな中で拠り所となるのが、「関係」なんですよね。

武田
武田

ほぉ。

篠原
篠原

自分自身としても心の拠り所が必要だし、他者との関係の中に拠り所を求めたり、あとは宗教観といったところに拠り所を求めたり。大体この3つの柱の中で関係を作って、それを拠り所にケアをしていくというのが結論として語られています。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

例えば、アルフォンス・デーケンさんという、死生学専門の上智大学の教授で、宗教家の方なんですが、この方は、人間は死ななければならない存在だと知っているにも関わらず、死それ自体が何であるかは知らない。また、いつ、どのように死ぬかというのを知らない故に、不安を抱く存在であると。

武田
武田

なるほど。死んだ経験は誰も聞いたことがないからね(笑)

篠原
篠原

誰も経験したことがないから、それがいつどこでどうやって起きるのかというのが不明なまま、ブラックボックスのままで、でも、皆死ぬということだけは知っているから、不安が増大するという。

武田
武田

うーん。

篠原
篠原

で、私達は関係の中で拠り所や自分を見つけるというのですが、僕がオススメしたい方法がありまして。

武田
武田

ほぉ。どんな方法ですか?

篠原
篠原

「書く」ということなんです。

武田
武田

Write?書く?

篠原
篠原

そうなんです。パソコンなどのタイピングではなくて、手を動かして書かないと駄目なんですが、不思議なもので、例えば不安もそうですが、できれば期待や目的もそうですが、書くことによって頭の中で一回それが追走体験として再生されますよね。

武田
武田

分かります。整理されますよね。

篠原
篠原

そうなんです。とめどなく書いているつもりでも、心と体の動きによって自然に整理されていく作用というのがあって、大きな不安を前にした時に、どうやって受け止めたら、どうやって整理したらいいのか分からないと呆然としてしまうものですが、是非、まず書いてみるといいと思います。特に効果があるのは、不安を書くということなんです。

武田
武田

そうでしょうねぇ。

篠原
篠原

このスピリチュアルペインというものは、歳とともに避けられないものですし、おそらく、もっとこの話は語られるべきだし、生き甲斐などについても様々な角度から取り挙げられるべきだと思うのですが、ただ、自然発生的に生まれてしまうこの不安に対しては、是非、書くということを通して、一度頭の中を整理してほしいと思います。

武田
武田

なるほど。今私もね、自分史書いてるんだよ。

篠原
篠原

いいですね!

武田
武田

いろんなことを思い出すんだよなぁ…。本当に、書いていると今まで全く思い出さなかったことも、思い出すんですよね。それをまとめていくとね、俺はこんな人生を歩んでいたんだなぁ…というのがよく分かるよね。

篠原
篠原

そうですよね。書くことの副次的な意味として、自分の体というのはいつか終わりが来て、姿形が無くなってしまうのですが、書いたものっていうのは残るんですよね。

武田
武田

やっぱり人間は子孫を残すということと同じで、残したいんだよな、サムシング(何か)を。

篠原
篠原

そうですね。この、言葉や書いたものが残るということは、残された家族にとっても宝ですし。

武田
武田

そうだよなぁ!

篠原
篠原

あの時親父は何を考えていたのかなどを知れるというのは、物凄く宝だと思いますね。

武田
武田

というわけで皆さん、不安があったら、その不安を紙に書いてみて下さい。少しは和らぐかも知れませんよ。

篠原
篠原

やはり、書くことからスタートして、その見える化したものに対してどうしていくかというところから向き合うのですが、まず、スタートラインに立つ意味でも是非書いてほしいですね。

武田
武田

えぇ。スピリチュアルペインというお話でした。今年は篠原さんにとって、東大屋店もオープンしたし、色々と大変な年だったと思いますが、いいことがたくさんありましたな。

篠原
篠原

そうですね。一歩ずつですが、段々とやりたいことに手が届くようになってきて、喜びとともに苦しさを感じています(笑)

武田
武田

これからも、多くの方の為になって下さい。ありがとうございました!

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