DIY葬の手引き【納骨篇】

ご家族の手での火葬が終わり、自宅に持ち帰ったお骨。

そのままご自宅に保管してともに過ごす。これもまた一つの形です。

しかし一般的な意見として、お墓に入れて弔いたい、とお考えの方も多くいると思います。

すでにお墓を持っている方はそちらに納骨するのが一番でしょうが、そういう方でも管理や後継者の問題で、永代供養や散骨を選ばれる方も増えてきています。

なので今回はDIY葬【納骨篇】と題しまして、現代のお墓事情・費用面のお話などを交えながらご紹介したいと思います。

紛いなりにも葬儀業者。末席ながら業界に携わる者からの助言として、ご参考にして頂ければ幸いです。

納骨の際の選択肢

  • お墓を建てる
  • 永代供養墓・合祀墓
  • 散骨
  • 樹木葬
  • 手元供養

一口に納骨・お墓という言葉でくくられていても、現代では無数の選択肢がそのなかにあります。

都市部での墓不足の問題、地方では人工の減少と共に核家族化が進みお墓の後継者がいない、など様々な問題を背景に本当に多くの種類の埋葬方法が誕生していきました。

しかし、お墓はその中から一つを選ばなければなりません。

故人の希望、家族の希望、親類や近所とのお付き合い、事情は皆さん様々でしょうが、最終的には自分たちの合った、納得のできるお墓を選ぶのが一番です。

なので今回は前述した代表的な選択肢のメリット・デメリットを順に解説していきます。

お墓を建てる

最も一般的なのがこのお墓を建てる、という選択肢です。

四十九日という忌明けまで、お骨は自宅、または寺院に持ち帰り、供養の期間を設けます。お墓や納骨堂に納める場合はその後になります。 

また、新しくお墓を建てる場合は、およそ2ヶ月から3ヶ月ほどかかり、四十九日に間に合わせることは出来ません。

そのため、一周忌、三回忌、またはお盆などといった節目に納骨される方も多いのです。 

では、お墓へ埋葬する場合の一例を確認していきましょう。 

基本的な手順としては

  • 土地の確保
  • 墓石の注文
  • 埋葬許可証の受け渡し
  • 納骨

となります。

費用面を考えていくと、

新しくお墓を建立する場合、墓を建てる土地の取得にかかる金額と墓石本体の価格で、地域にもよりますが、300万円近い相場となっています。 

既にお墓を所有している場合は、納骨の作業費として3万円ほどかかります。

納骨自体の作業は、蓋を開けて納骨、そして納骨後に蓋を閉めてコーティングをしてもらい終了となります。

またお墓への埋葬では、故人のお名前を彫る彫刻料も発生します。

こちらがおよそ4万円前後になりますが、彫刻料のみで、納骨料金を無料にて行なってくれる業者もあるので探してみるのがいいでしょう。

寺院や納骨堂に納骨する場合は、20万円から100万円と、利用する施設のタイプにより異なります。

この埋葬を選ばれる方は死後、家族親族がともにある場を遺すことを目的にされています。

古くから連綿と続くこの埋葬方法は、それ故に確たる手法と作法が確立されている、というメリットがあります。まだまだできたばかりの他の埋葬方法は、知名度が低い分他の親族の方の反対を受けやすい、という側面があります。

しかし、この埋葬はそういった心配が一切なく、歴史の中できちんとした作法がはっきりしている分、お墓参りを迷うこともないでしょう。

逆にデメリットとしては先に述べた費用面と管理面でしょう。

土地と墓石の費用がある分、この埋葬方法は他と比べて費用面がかさみやすいです。

更にもし、今後管理する方がいなくなってしまった場合、墓じまいの費用として墓石の撤去費用もかかってくることのもなるので、注意が必要です。

次に管理面。お墓の管理にはその都度管理する方が必要となり、多くの場合は直系の子孫が管理を引き継ぐ形になります。

しかし近年、この管理を負担に感じる方も多く、その負担のために墓じまいを行う方も増えてきています。そういった面でも、お墓の建設には注意が必要と言えます。

そんな風潮も有り、近年ではお墓の管理を別の方に任せる埋葬方法、あるいはそもそも管理の必要がない埋葬方法、

いわゆる「後継者を必要としないお墓」を選ぶ方が増えてきています。

これから紹介していくのも、その風潮によって作られていった埋葬方法です。

後継者を必要としないお墓

永代供養墓・合祀墓

永代供養墓とは、永代供養を行なってくれるお墓のことです。

永代供養とはお墓参りへ行くことが難しい方や、独身あるいは子供がいないためお墓を継いでくれる人がいない方、お墓にお金をかけることが難しい方などに向けた供養の方法です。

永代供養は永遠に供養を行なってくれるわけではなく、長い年月に渡って供養をしてくれることを指します。

契約する際に33回忌や55回忌などの期間を決めて、その期間内は契約内容に沿った法要を行ってくれます。

この契約期間を過ぎると、他人の遺骨と同じお墓に納骨する合祀(ごうし)を行います。 

この方法のメリットは先に述べた管理の不要、そして費用です。

合祀の場合だと最低5万円から見つけることができ、管理費も個別のお墓と比較にならないほど安くなります。

逆にデメリットもまた前述の通りで、永代とはいっても33年、55年経った際にはたとえ個別供養でも合祀と同じく他の骨と一緒に埋葬されることになることです。

契約の際は内容をしっかりと精査した上で、納得のできる契約を。

散骨

供養の中で最も費用を抑えることができるのがこの散骨です。

散骨とは、遺骨を粉末状にして遺灰にし、故人の思い入れの深い海や土地にまく供養です。

最近ではお墓の管理が困難だという社会現象に合わせた供養ということで、注目されています。

この方法のメリットとしては先程述べた費用面と管理面が挙げられます。

お骨を粉末状にする際、砕骨料はかかってきますが、墓石などの形に残るものがない分、その他の費用が大幅に削減できるのがポイントです。

ただ、個人で山や海などに散骨を行う場合、散骨が禁止されている場所等もありますので、役所等でよく確認をとってから行うことをおすすめします。

逆にデメリットとしてはメリットに付随して「形に残らないこと」でしょうか。

墓石・樹木など故人を表し指し示す指標が造りづらいため、お墓参りなどの際にお参り先が山や海など「漠然とした領域」になってしまいます。

これをメリットと考える方もいますが、お墓というものの存在意義として故人の、そして個人の生きていた証という考え方もあるので、ここではデメリットとしてご紹介しています。

さて、散骨という方法についてご紹介していきましたが、一口に散骨といっても場所や手法の違いなどで様々な種類が存在します。

ここからはそんな様々な散骨を費用面も合わせご紹介していきます。

・海洋散骨

海洋散骨とはその名の通り海にまく散骨で、チャーターした船に乗って遺灰を沖合から数キロ地点でまく方法です。

業者に依頼をして遺灰を送り、散骨を代行してもらう方法と、遺族で集まり船をチャータして自分の手でまく方法などがあります。

費用は10万円〜20万円ほどです。ただし、どこの海でもまいて良い訳ではないため、業者にしっかりと散骨の対象範囲を聞いておきましょう。

・山散骨

故人がハイキングが好きだったり、山や自然が好きだった場合に行われる散骨で、海洋散骨に比べると取り扱い業者が少ないです。

山は多くの場合、国や個人の所有であることが多いため、行える場所も少ないです。費用は海洋散骨と同じくらいで15万円〜20万円前後です。

・宇宙葬

宇宙葬は、遺灰をカプセルに納めてロケットに搭乗させ宇宙に送る散骨です。取り扱い業者がかなり少なく、費用が高額になる傾向があります。

・バルーン葬

バルーン葬は、大きな風船に遺灰を納めて空に送り、宇宙で破裂させる散骨です。

メディアなどでも取り上げられたことのある方法で、注目が集まっています。費用は20万円前後です。 

 散骨自体は他の供養に比べて格段に費用を抑えることができますが、馴染みがなく周囲の親族などから反対を受けることがあるため、自分1人で決めずに周囲の同意を得てから行うようにしましょう。

樹木葬

遺骨を木の根元に埋葬し、樹木の糧として自然に還る。そんな考えのもと生まれたのがこの樹木葬です。

この方法は樹木そのものが個人のお墓、という形になるので、墓石ほど費用がかかることもなく、はたまた散骨のように個人が識別できない、といったこともありません。

費用面でも業者によっては合葬で最低5万~行っているところもあるので、お得です。

デメリットとしては墓標が生きた樹木である以上、どうしても管理のための手間と費用かかってしまうことです。

このあたりは霊園の管理者等に任せてしまえることもあるので、契約等をしっかり確認しながら自分にあった方法を選ぶことをおすすめします。

手元供養

手元供養とは、お墓や納骨堂に遺骨を収めるのはなく、自宅で遺骨を保管する方法です。

手元供養では、全ての遺骨を自宅で供養する「全骨安置」と、お墓あるいは納骨堂などに遺骨の一部を納骨して残りと自宅に安置する「分骨安置」の2種類の方法があります。

分骨をするタイミングとしては火葬場で分骨する場合とお墓に埋葬されている遺骨の一部を取り出す場合があります。

火葬場で分骨をする場合には、「分骨証明書」または「火葬証明書(分骨用)」を火葬場で発行してもらいましょう。

この書類を発行してもらうには手数料がかかります。手数料は火葬場によって異なりますが、多くの場合一枚300円前後です。

お墓にすでに埋葬されている遺骨を分骨する場合には、そのお墓を管理している管理事務所あるいは寺院から「分骨証明書」を発行してもらいましょう。

さて、手元供養をする場合には、骨壷や仏壇などに遺骨を納める方法と、アクセサリーなどに加工する方法があります。

お家におけるサイズの小さな仏壇でも様々なデザインがあるため、好みのものを選ぶことができます。

また、アクセサリーなどに加工する場合には、ペンダントの中に納めたりダイヤモンドに加工してそのまま指輪などにすることが可能です。

かかる費用は手元供養の方法によって千差万別ですが、相対的に普通にお破過を作る場合よりも安く抑えることができます。

ただ、デメリットとして持ち運べるほどの大きさゆえに紛失の恐れがどうしてもあり、またアクセサリーなどに形が変わっても遺骨であることに変わりはないため、全く後継者が不要というわけにはいきません。

手元供養で注意しておきたいこととして、同居人や家族の同意を得ておくことが重要です。

遺骨を家に置いておくことに対して違和感や嫌悪感を抱いてしまう可能性があります。

そのため、しっかりと手元供養をしたいという希望を伝え、同意を得てから行いましょう。

納骨の時期

さて、ここまで納骨の手法について具体例を説明してきました。

なので続いては納骨の時期、火葬を終えてお骨を自宅に持ち帰った後、どのタイミングで納骨を行えばよいのかを解説していきます。

結論から言ってしまえばいつでも大丈夫です。

仏式で葬儀が行われる場合だと四十九日のタイミングで納骨するのが一般的ですが、そこに定められた法律などは特にありません。

火葬後その足でお墓に行き、納骨を行うかたもいます。

なので自身や親族の都合を鑑みた上で、最も都合のいいタイミングを見つけ、そこに合わせて準備をしてくのが一番です。

納骨の際に必要なもの

  • 埋葬許可証
  • お骨
  • お墓参りセット(仏式の場合はお花・線香・ライター・新聞紙・お水など)

基本的にはこれらが揃っていれば問題ありません。

中でも埋葬許可証は最も重要です。

上記でも軽く説明しましたが、これは火葬の際に火葬場から発行される書類で、お墓への埋葬のさいに管理者に渡さなければならない書類です。

紛失した際はまた再発行することはできませんので、骨壷・骨箱と一緒に保管することをおすすめします。

まとめ

DIY葬の手引き【納骨篇】は以上となります。

納骨はご家族・ご親族にとって今後を左右する重要なもの。

また、今現在お墓を持っている方でも、墓じまい・改葬という形でお墓を移すことや、分骨という形でお骨の一部をお墓に納め、一部を手元に保管する、といった形を取ることもできます。

そんな選択肢を頭の中にとどめながら、後継者・管理・お墓参り等、すべての観点から検討し、自分たちにあったお墓の形を考えていただければ幸いです。

納骨には決まった時期はありません。なのでご親族と話し合いながらゆっくりと決めていただくことをおすすめします。

四篇に渡ったDIY葬の手引きもここまでとなります。

この内容に関するご質問等があれば、お気軽につばさホールまでお問合せ下さい。

最後までお読みいただきありがとうごさいました。

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