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2016.03.19 おくりびとからのメッセージ「認知症について」

武田徹:篠原さん、本日は「認知症」のお話ですか。

篠原憲文:はい。3月1日のニュースでやっていたのですが、2007年12月に認知症の男性が徘徊中に列車にはねられて死亡したという事故で、これを巡ってJR東海が家族に対しての損害賠償を求めた裁判がありました。最終的に家族の賠償責任はないという判断が最高裁で出たということだったのですが、これは非常に社会問題になりました。やはり、認知症について考えさせられるようなニュースだったのですが。この事故は、当時奥さんは85歳で、要介護の1という状況だったそうなのですが、奥さんが日常的に旦那さんを看ていらして、ご長男さんもいたそうなのですが、別居して20年ぐらい経っている状況で、家族に対して監督責任があるかどうかが問われたのですが。

武田徹:そうだよなぁ。

篠原憲文:家族や自分もいつかそうなるのではないかというところを考えると、監督責任を問われては、認知症の家族を看るには24時間の見守りが必要ですから。

武田徹:大変なことだよな。

篠原憲文:そうですよね。なので、この家族がどうなっていくかというのは、社会的な関心事だったんですね。ただ、JR東海の考えも分からなくはないというところがあって、実は日本で認知症が原因だったと考えられる鉄道事故の発生件数が、2005年から2012年の間で、およそ150件ほど起きていて。

武田徹:結構多いんだね。

篠原憲文:年にして20件弱ですから、やはり今後増えていくという中でも、賠償責任というのも分からないでもないということで。

武田徹:これは国鉄のJRの事故ですから、我々とあまり関係ないけれど、例えば自動車事故に遭ってしまう場合だってあるでしょう。認知症の方が運転して轢かれちゃったと。それはどうするかというのだって、これから絶対に起こってくるからね。

篠原憲文:そうですよね。この認知症という病気と、死について考えるというのは非常に難しいテーマだと思うのですが、認知症は介護の問題というのがあって、やはり家族の負担の大きさですよね。

武田徹:うん。

篠原憲文:先程、24時間の見守りが必要だという話があったのですが、看ている側も当然睡眠が必要ですし、ずっと看ていられるかと言えば難しいですよね。

武田徹:当然ですね。

篠原憲文:ですので、家で看るという中では、もう地域ぐるみでないと対策は非常に難しいと。で、この見守りも責任感が強い人ほど深刻になってしまいがちで、心中問題などがニュースになったりもしているわけでして、現在日本で非常に大きな問題ですよね。この認知症を世界レベルで見てみますと、世界で70歳以上人口の2番目に多い疾患だと言われていまして。

武田徹:なるほど。

篠原憲文:世界的にも認知症を患って大変苦労されている方が多いんですね。全世界では3560万人ぐらいがこの病に罹ってらっしゃると。で、先程の見守り、いわゆる介護が必要ですから、経済的なコストという意味でWHOというところで試算されているのですが、世界で70兆円ほどの経済コストがあると。その病を看るにあたってですね。これは国にしてみると、スイスのGDPを上回るぐらいあるということで。

武田徹:なるほど。

篠原憲文:ましては、毎年その患者さんが770万人ずつ増えてくると言われているんですね。

武田徹:増えてくるわけだ。

篠原憲文:世界的に見ると、2030年になると7000万人を超えて、今後2050年頃には一億人を超えるだろうと言われているんですね。

武田徹:これは長寿社会の一つの負の部分だよね。

篠原憲文:そうですね。これはやはり先進国での問題なんですね。まさに長寿が抱える問題の一つが認知症で、先般に終末期医療を考える会というところで武田先生がご出演されてお話されていたなかで。

武田徹:皆でやらしてもらいましたな。

篠原憲文:そうですよね。以前、長尾先生が講演された際に、終末期を考えるときに二つの病気が出てくると言うんですね。一つは癌で、もう一つは認知症と仰られていました。終末期、人間の最後を考える時には、癌と認知症と向き合わなければならないと。で、この癌に関しては、長尾先生のお言葉を借りるとすれば、ある意味では看取りが簡単だと仰るんですね。理由としては、末期の癌というのは、平均的に療養期間が1.5ヶ月ぐらいということで、緩和ケアという痛みを取る治療に入っていくのですが、ある意味では先がある程度見えるという。

武田徹:そうそう。

篠原憲文:認知症は5年、10年。長ければ15年という長い療養期間が必要だと。そして施設に入れればいいのですが、80、85歳になってこないと、中々入れなかったり、また、入るための条件というのが色々あるわけで。

武田徹:もちろん、経済的にも大変ですしね。

篠原憲文:やはり、先進国の高齢化や長寿化という中において、どうしても切り離せない話が認知症なのですが、同様に難しい病気の癌の場合ですと、身体の痛みを伴う分、様々な処置法が開発されてきていて。認知症というのは、家族やまた周囲が、スピリチュアルペインといいますか、心に対する痛みを伴って。それで、他の先進国はどうなっているのかというのはやはり参考になるので、オランダの例を見ていきますと、オランダという国では、2012年から認知症の患者に対する安楽死が可能になったんです。

武田徹:もうそれやってるの?

篠原憲文:そうなんです。この実情についてお伝えしたいと思いまして、オランダでは2002年から安楽死が合法化されたんですね。安楽死というと、意図的に寿命を縮めるということで、主には薬の処方などになるのですが、基本的に本人が希望しなければされないわけです。

武田徹:ということは元気な時に安楽死したいかしたくないかを書いておかないとマズイということだね。

篠原憲文:そうなんです。認知症の患者の方も安楽死が出来るようになったのですが、本人が意思表示をしないとできないという大原則があるので、元気なうちに自分で意思を明確にして、その意思を安楽死要望書という形で作っておく必要があるんです。

武田徹:ほぉ。

篠原憲文:これを作っていれば、認知症という病に対しても安楽死が可能となったのですが、構造的にも難しいわけです。当然、認知症を患ってからでは。

武田徹:遅いわけですよね。それとその認知症の状態もあるわけじゃない。これがまた難しいよね。

篠原憲文:これがまた難しいんですよね。例えば、調子のいいときは殆ど問題ないのだけれども、夜になると出歩いてしまったりとか、やはり非常に難しい病気ですよね。ここの問題というのが、社会的な議論も遅れている部分だと言われているのですが、末期癌というのは、ある意味では耐え難い身体的な苦痛があったり、療養的にも先の望みが難しいだろうという判断がつくわけですよね。

武田徹:うん。

篠原憲文:苦しいけれども、そういうものがつくから法的にも進んで安楽死が望めるようになってきたと。現にオランダで見ますと、年間約4000人ぐらいの方が安楽死を。

武田徹:末期癌の方?

篠原憲文:末期癌も含めて、全体でおよそ4000人ぐらいが安楽死で亡くなっていると。

武田徹:なるほど。

篠原憲文:内80%、8割が癌を患っていると言われていまして。

武田徹:そういうことか。

篠原憲文:残りの2割ということなのですが、認知症を患っている方でも特に重篤な状況にあったりする場合は、本人の意思表示が確認できない中で、非常に難しいわけです。基本的には重篤な状況になると、薬による療法しかないそうなのですが、やはり今後の日本においても増えていくと言われてますし。認知症というのは長寿化してくるから起きる話で、メインとしては80歳を超えたあたりから、段々と身近な問題になってくるそうなのですが。

武田徹:うん。

篠原憲文:今後まだまだご高齢の方が増える予測が立っておりますし、考えていかなければいけないですよね。

武田徹:本当に難しい問題だなぁ。

篠原憲文:難しい問題ですよね。日本においてはどうかというと、認知症を患って終末期にある方々の聞き取りアンケートの調査結果では、多くの方が自宅での最後を望んでいらっしゃるそうなのですが、やはりご自宅で看ていると、例えば列車による事故や車による事故が。

武田徹:有り得るわな。

篠原憲文:そうですよね。また、所在不明者問題というのがあって。

武田徹:そうなんですよ。

篠原憲文:これは警察庁のまとめで、1年間の間に認知症を患ってると明確に分かってる方の捜索願が出ている数が、10,322人と。

武田徹:今でもさ、自分の家がどこにあるかも分からない方が、かなりおられるんだってね。

篠原憲文:そうなんですよね。やはり自宅で看るというのは、介護の面からでもやはり限界があるかなぁという中では、やはりグループホームのようなところに頼るケースというのは考えられるのですが。一応、国としても相談の窓口というのが各地域にありまして、地域支援包括センターというところで、各地域に設けられておりますので、最寄りの街などでご相談するといいと思うのですが。ですので、そこが一番の相談先だと思うのですが、ある意味で全国組織という意味では、一般社団法人なのですが、認知症の人と家族の会という団体が1980年代から活動しているのですけれども。どうしても中々出口の見つかりづらいお話ですから、経験した方や、日々そういう方々の相談に乗っているところにお話をするのが一番いいと思うのですが。

武田徹:取りあえず今はそういうことぐらいしかできないということなんだけど、将来は地域全体が一つのシステムを作ってやっていかないと、これはとてもじゃないけど対応しきれないよね。

篠原憲文:そうですね。家族の問題というよりも地域の問題として取り組んでいかなければ、中々解決法が見えてこなくて、日本はより進んだ高齢社会ですけれども、日本だけでなく世界の他の先進国でも同様の問題を抱えていて、やはり確実な治療法というのはまだなくて、薬療法の中で付き合っていくということでしか難しい。非常に倫理観を問われる問題でもありますし。昨今は、命は尊いという御旗のもとにひたすら延命させるだけが。

武田徹:よかったと。

篠原憲文:中々最後の話というのは出口が見えなくて、結論も出なくて難しいのですが。

武田徹:長寿社会の光と。光の部分があれば影の部分も必ずあるという。物事には必ずあるんだよね。長寿社会の影の部分もしっかり見据えていかないと、えらい大きな社会問題になり得るということですよね。

篠原憲文:そうですね。困ってる方々は、国が用意している窓口があるので、是非相談に行ってください。

武田徹:ありがとうございました。篠原さんのお話でした。

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