葬儀社の手を借りず、自分たちの手でお葬儀を組み立てるDIY葬。
葬儀社の施設利用料や手数料などがなく、必要なものを自分たちの手で選別できる分、葬儀費用はぐっと安く抑えることが出来ます。
しかし、その分業者に任せることが出来ていた工程を自分たちで行なう必要があります。
そしてこれからご説明する「火葬」は、DIY葬の中で最も一般の方から縁遠い工程です。というのも、普通の葬儀においてこのあたりの手続きは業者が全て担っているため、個人での火葬はとても珍しい部類になるのです。
なので今回はそんなご遺体の火葬について。実際に火葬を執り行っている我々業者の観点から詳しくご説明させていただきます。
もし、DIY葬を考えているが自分たちだけでは不安が残る、とお考えの方はこちらの記事を参考に考えていただけければ幸いです。
火葬の流れ
まず、火葬という工程の大まかな流れは以下のようになります。
- 死亡届の記入
医師から発行された死亡届の右半分に必要事項を記入します。
この際に記入した死亡届は必ず三枚ほどコピーしておきましょう。死亡届は役所提出後、再発行することはできません。 - 死亡届の役所提出
記入した死亡届と認めの印鑑をもって役所に提出にいきます。
死亡届を提出し、引き換えに火葬許可証を発行してもらいます。
公営の火葬場にて火葬する場合は一緒に火葬場の予約をします。 - 火葬場の予約
公営の火葬場を利用す場合は市役所にて。
民営の火葬場を利用する場合は火葬場にて。
それぞれで火葬する炉の予約をします。
場所によってはこの時点で火葬の料金を前払いすることもありますので、ある程度の現金を持参すると安心です。 - 納棺
遅くとも火葬場へ出発する前までに、ご遺体を棺の中へ納棺します。 - 火葬場への搬送
棺に入れたご遺体を火葬場へ搬送します。 - 火葬料金の支払い
火葬場に到着後、受付にて火葬の料金を支払います。
この際、一緒に火葬許可証を提出します。 - 火葬
火葬場職員の手によって、ご遺体を炉の中に納め、火葬が開始されます。
この瞬間がご遺体と対面できる最期の瞬間となります。 - 拾骨
火葬したお骨を骨壷に納め、ご自宅へ持ち帰ります。
この際、埋葬に必要な埋葬許可証が発行されます。
※火葬場には「公営(自治体が運営する火葬場)」と「民営(民間会社が運営する火葬場)」の二種類が存在します。
DIY葬で利用するのは基本的に前者、公営の火葬場なので、火葬の予約はその火葬場が存在する地域の市役所で行うことになります。
民営の火葬場は個人での予約ができないところが多く、DIY葬には不向きといえます。
また、複数の行政区で共同運営されているケースもあります。事前の確認、あるいは役所提出時の確認をお忘れなきようお願いします。
以上のことに気をつけながら、最低限この流れに沿って火葬を行えば問題はありません。
もし心配なようであれば、火葬場を運営する団体に連絡し、細かな注意事項を確認することをおすすめします。
これより下記はより詳しく火葬の工程を、実際の流れに沿って説明していきますので、不安のある方、興味のある方はこちらをご参照ください。
火葬前日までの準備
死亡届の提出
DIY葬について説明する上で何度も登場したこの「死亡届」。
医師から発行され、搬送・安置を経て手元に残ったこの書類は、この工程で必要事項を記入し、役所に提出となります。
自治体によってはここで火葬予約を取らなければならない場合もあるので、きちんと確認が必要です。
さて、それでは死亡届提出に関して、より詳しく2工程に分けながら順にご説明していきます。
- 死亡届記入
そもそも死亡届というものは、臨終の際に医師に発行してもらうものです。
一枚のA3の紙で、左半分が「死亡診断書」。右半分が「死亡届」に分かれており、医師が左半分を。ご家族が右半分を記入することになります。
基本的には指定されている事項、死亡者と届出人の情報・住所・本籍等を記載していきます。
その際、人によっては本籍などの情報が曖昧な方もいるでしょう。その場合は提出の際、役所にて正しい情報を検索することができます。分かる範囲で記載し、認めの印鑑とともに役所に提出にいきましょう。 - 役所提出
個人の本籍地・死亡地・届出人の現在地、そのいずれかの役所の市民課に届け出ます。
また、利用予定の火葬場が「公営」の場合、死亡届の提出とともに火葬予約が必要となるため、利用予定の火葬場のある地域の市役所に提出しなければなりません。
提出先は市民課。処理には平均1時間ほど掛かります。
その間に火葬場の予約や今後の手続きについて、市役所の方に確認するとよいでしょう。
自治体によってはこの時点で火葬の料金を支払う場合もあります。
そして死亡届を提出し、受理が完了すると、引き換えに市から「火葬許可証」が発行されます。この書類は火葬の際に必ず必要になるものですので、きちんと保管し火葬の際に持参しましょう。 - 死亡届のコピー
今後の手続きのために絶対にやっておかなければならないのが、この死亡届のコピーです。
タイミングは死亡届記入のときか、役所での提出のとき。
どちらでも大丈夫ですが、役所でのコピーをおすすめします。
このタイミングはご家族の記入した死亡届の情報の精査が完了し、間違っている場所が訂正されているためです。
役所の職員に依頼すれば数十円でコピーをしてもらえるので、忘れないように依頼をしましょう。
この死亡届は一度提出してしまったら再発行が効かず、生命保険の手続きなどで必要になった場合にトラブルに発展してしまう可能性があります。そんな事態を回避するためにも、必ず一枚、できれば三枚ほどコピーをとって手元に保管することをおすすめします。 - 火葬予約
火葬場で火葬をするために必要なのが、火葬場の炉を予約することです。
前述のとおり、公営の火葬場は市役所で、民営の火葬場は火葬場に直接出向き、火葬予約を取ることになります。
公営の場合は死亡届を提出する際に一緒に予約してしまうことが多いです。
この際、自治体によっては予約時点で火葬の為の料金を払わなければならないところもあるので、現金を持参して向かうことをおすすめします。
火葬場で火葬できる時間帯は火葬場によってまちまちですが、多くの場合は午前から午後にかけて、大体6~10個ほどの時間が用意されています。
火葬を希望する方はこの時間の中から一つを選び、別の火葬が入らないよう予約しなければなりません。
この時予約した時間で当日の日程が決まってきますので、もし都合のいい時間が空いていない場合は翌日まで待つのも一つの手です。 - 納棺
ご遺体を棺の中に納めます。
この工程はここでなければならない、というわけではなく、火葬場へ出発する前までであれば何時でも構いません。
おすすめとしては搬送前の施設、あるいはご自宅に搬送してすぐが一番望ましいです。
ご遺体をそのまま、あるいは下のシーツごと持ち上げ、棺の中にお入れします。
この際、ドライアイスの残りの量に注意を払いましょう。火葬の際に完全に溶けきっていることがベストですが、もし溶け残りそうならば、火葬場へ行く前に取り除いておきましょう。
ドライアイスは基本的に火葬の炉の中に入れてはいけないもの、として火葬場から指定されています。火葬場とのトラブルを避けるためにも確認の徹底をお願いします。
以上が、火葬前の準備となります。
役所提出や火葬予約などは怠ってしまうとDIY葬そのものが成立しなくなってしまい、役所提出にいたっては罰金が発生してしまいます。
きちんと順に確認し、漏れのないよう準備を進めていきましょう。
また、火葬の日を葬儀と考えた場合、この前日が事実上のお通夜の日になります。故人様と過ごす最後の夜であるとともに、親族が集まる貴重な機会となることもあります。
故人様の思い出話に花を咲かせながら、料理を囲む一夜とすることもまた、故人様への弔いとなる事でしょう。
火葬当日
当日の流れ
- 火葬場へ搬送
- 火葬30分前
火葬場現着・火葬許可証提出・火葬料金支払い - 火葬
- 火葬60~90分後
拾骨
順に注意点をご説明していきます。
火葬場への搬送
火葬当日。ご遺体を、安置している自宅から火葬場へと搬送します。
持参するものとしては
棺・骨壺・火葬許可証・火葬料金の四つです。
この際、ご遺体はすでに棺の中に納まっていること。ご遺体に当てていたドライアイスを全て取り除いたこと。
この二点を必ず確認しましょう。
火葬場では多くの場合、ご遺体を棺に入れる暇はなく、そのまま火葬に進むことになります。
棺に納められていないご遺体は基本火葬してもらえません。同様にドライアイスが入っている場合も。
なので必ず自宅を出発する前に書き人をしましょう。
そして最後に車です。
搬送の時と同様、棺の搬送には相応の大きさの車が必要になってきます。
今回はご遺体よりも二回りほど大きな棺を車の中に積むため、より大きな車の準備が必要になってまいります。
以上のことを踏まえ、余裕を見て予約した火葬時刻の30分ほど前に火葬場に到着するよう、ご自宅を出発します。
火葬場にて(火葬前)
火葬場に到着したら、職員の案内に従って棺を炉の前に移動します。
その際、喪主に当たる方は受付に向かい、火葬許可証を提出します。
火葬場にもよりますが、市役所等で火葬料金を払っていない場合は、このの段階で火葬料金の支払いへ移行する場合が多いです。
その後炉の前に移動し、火葬となります。
火葬場にて(火葬)
炉の前では最後のお別れの時間が設けられています。
火葬場の都合上、この時間はあまり長くとることが出来ません。なので、前日までにお別れを十分に済ませてから臨むことをおすすめします。
お別れの時間が過ぎると、親族の方々に見送られながら、故人さまは炉の中へと納まっていき。
そして火葬、となります。
火葬にかかる時間はおおよそ60~70分ほど。
若い方や体格の良い方はもう少しかかることもあります。
拾骨
火葬が終わり、職員の手で炉の中より帰られたお骨を親族の手で骨壺の中へと拾い集めます。
全て拾った後は骨壺を風呂敷などでくるみ、骨箱に入れて自宅、あるいはそのままお墓へと納骨となります。
この工程の前後に、火葬が無事終了した証として火葬場から「埋葬許可証」が発行されます。
この書類はお骨をお墓に納骨する際に必要になる書類です。それ以外に使う事例はあまりないので、骨壷と一緒に骨箱の中に入れておくことをおすすめします。
以上がDIY葬における火葬の一般的な流れとなります。
まとめ
DIY葬の手引き【火葬篇】は以上となります。
火葬は主に業者が中心となって手続きを進めることが多い分、どうしても一般の方には縁遠い工程です。
そして同時に、故人が旅立つうえで最も家族の温かさに触れることのできる時間であるともいえます。
故に準備をきちんとし、ご家族のだれもが満足のできるお葬式を形作れるよう、この記事を参考にして頂ければ幸いです。
DIY葬の手引き【納骨篇】に続く。
DIY葬の手引き【準備篇】 DIY葬の手引き【搬送~安置篇】 DIY葬の手引き【火葬篇】 DIY葬の手引き【納骨篇】