2020.04.18「感染症と弔い」

おくりびとからのメッセージ

武田
武田

本日は、インターネットを通じてお話しを伺いたいと思います。

篠原
篠原

こんにちは。

武田
武田

安曇野市の梅吉さんからのお便りです。「安曇野市も朝から雨が降っております。外出自粛が叫ばれている今では、恵みの雨だと思います。さて、今日のゲストの篠原さんからもお話しがあると思いますが、先日の志村けんさんの訃報は衝撃でしたね。更に、感染症で亡くなられたという理由で、あれだけのスターでありながら、誰にも見送られず火葬されることになったのが、悲しみをより深いものにしたと思います。しかし明日は我が身ですよ。私たちもできる限り対策をしていきます。」ということですけれども。

今日は「感染症と弔い」というテーマでお話しをされるということで、よろしくお願いします。

篠原
篠原

はい、よろしくお願いします。

武田
武田

私もニュースなんかで見るけれども、感染症の方というのは、看取りなどが本当にできないようだね?

篠原
篠原

そうですね。現在の日本では、通常は24時間経たないと火葬できない法律がありますが、一類感染症というものに分類される病気の場合、特例的にすぐ火葬を行うことができます。今回の新型コロナウイルスは、指定感染症というものです。

武田
武田

ほぉ。

篠原
篠原

平成25年に新型インフルエンザが流行った頃、厚生労働省から遺体の取り扱いガイドラインというものが出まして、今回のコロナウイルスもそれに乗っ取る形で運用されているのですが、これがまさに、ご面会できない形を推奨しているといいますか。

武田
武田

うん。

篠原
篠原

コロナウイルス等で亡くなりますと、非透明の、納体袋と言われる接触感染を防ぐ袋に納めなければいけないと。そして棺に納めるのですが、そうすると面会が叶わないんです。

武田
武田

そういうことですよね。

篠原
篠原

最近、東京の葬儀社さんでコロナウイルスの対応にあたった会社の方とお話しさせていただいたのですが、東京の方では現状、病院などから直接火葬場へ向かうような形で対応しているというお話がありました。

武田
武田

病院から直接火葬場に運ばれてしまうと…。

篠原
篠原

そして、感染症の方が利用されている病院は比較的大きな病院が多いそうですが、そこの霊安施設などで納体袋や衛生の安全処置を施します。

武田
武田

そうですね。

篠原
篠原

病院で処置を行って、火葬場へ向かって、本当に最小限のお別れだけして、必要であれば、お骨の状態でお葬儀をするそうです。

武田
武田

これはつばさ公益社にも、こうやって下さいという司令みたいなものが出ているんですか?

篠原
篠原

佐久市では、佐久広域連合という火葬場の管理をしている団体があるのですが、そこからの通達という形で、厚生労働省からの案内が各業者に出されております。

武田
武田

うん。

篠原
篠原

ただ、火葬場の管理などが会社によって様々で、例えばお隣の上田の斎場の指定管理会社さんのガイドラインでは、火葬場に行ける人数が10人までに制限されていたり。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

あとは、出棺時に斎場の業者さんが霊柩車で迎えに来てくれたりするのですが、上田で火葬場の霊柩車を頼んだ場合、通常は霊柩車の助手席には喪主になる方が座ったりしますが、基本的に同乗はご遠慮いただいて、ドライバーのみで行くという形を上田ではとられていたりします。

武田
武田

要するに、葬儀場も密接、密集を防ぐということですね。

篠原
篠原

そうですね。葬儀場も火葬場も現在の環境下では、感染症でなくても予防の為に気をつけていきますということで。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

まだ、佐久の方では、人数の制限などは決められていないですが。(※現在は10名以下の制限あり)

武田
武田

ということは、各自治体によって違うということだね。

篠原
篠原

そうですね。

武田
武田

それで、コロナで亡くなった方はまだつばささんに来ていないと思いますが、納体袋というものは、すぐに支給できるんですか?

篠原
篠原

先般ご案内したとおり、いわゆる世界的なサプライチェーンマネジメントというか、例えば、棺の90%を中国から輸入していると。

武田
武田

そういう話でした。

篠原
篠原

棺不足が1月~2月とあったという話をしましたが。

武田
武田

現状はどうなんですか?

篠原
篠原

棺不足は3月下旬ぐらいから解消して入るようになってきていますが、納体袋は、実例が増えるごとに在庫がどんどん減ってきている状況です。

武田
武田

やっぱりね。

篠原
篠原

つばさでは、8名分の納体袋を所持していますが、それを超えてくると少し苦しくなってきますね…。あまり過剰在庫をしないように運用していますが。

武田
武田

なるほど。現在は世界中の新型コロナの影響をテレビで目にすることができますが、例えばニューヨークなんて、物凄い死者の数じゃないですか。もう納体袋だけで凄い大変なことだと思いますよ?

篠原
篠原

米国、特にニューヨークは、ニューヨーク州の離れ小島の、かつて刑務所があった場所に溝を大きく掘って、土葬していると報じられていましたが…。

武田
武田

うーん…。

篠原
篠原

日本でも、東日本震災の時に一時的にそうしていましたが、こういった大規模な疫病被害で大勢の方が亡くなられるという状況になっては、世界中でお別れが十分にできず、そもそも面会が危険を伴うということで、平時では考えられないような状況になってきています。

武田
武田

ということは、亡くなった方の、特に家族の皆さんは、心の交流がずっと深かった訳で、やはりお別れができるとできないのでは、その後の精神状態が随分変わってきますよね?

篠原
篠原

そうですね。正直志村けんさんの葬儀にあたっては、ご家族、ご兄弟の方々も、お骨になってから手元に来たわけで、そこにおそらく現実感はないと思いますし、受け入れられないことはあると思います。

武田
武田

こういうことは非常に、言ってみれば心の傷みたいになりますので、対策をこれから求められるようになるでしょうね。

篠原
篠原

そうですね。あと、聞いている方が興味があるかもしれないので案内しますが、現在、マスクやアルコール系の消毒液が無くなってきていますよね。

武田
武田

そうみたいですね。

篠原
篠原

実は、私共の業界内などでも多方面から確保ができる状況になってきていて、マスクに関しては、金額は以前50枚で500円~600円で、現在は50枚で3,000円前後になりますが、手に入る状況になってきていますね。

武田
武田

それはよかったね!

篠原
篠原

マスクや消毒液は得られるようになってきていますが、防護服やフェイスガード、特に防護服は現在手に入りづらい状況ですね。東京の業者さんでは、使い捨てのレインコートを代わりに使っているところもあるそうです。

武田
武田

東京で呼びかけをしたらだいぶ集まったようですが、新品って中々普通のお宅にはないからねぇ…。

篠原
篠原

そうですね。そういった時には、全て使い捨てで対応する必要がありますね。

武田
武田

そういうことですね。

篠原
篠原

マスクや消毒液は、ゴールデンウィーク明けぐらいから徐々に流通すると、一部では言われ始めていますね。

武田
武田

それはよかったですね。まあ、一番は死者を出さないことだね。

篠原
篠原

端的に話すと、日本ではコロナで亡くなった方が200名ちょっとですよね。例えば、国内では肺炎で毎年120,000人ぐらい亡くなってる訳です。

武田
武田

結構多いんだよね。日本ではまだコロナ被害が少ないということです。

篠原
篠原

医療関係者が手を尽くしてる結果だと思いますね。

武田
武田

ご苦労様ですね。

篠原
篠原

色々な見方はあると思いますが、医療関係者の頑張りによって、亡くなる方は随分抑えられてるのではないかと感じます。

武田
武田

確かにそうですね。

篠原
篠原

少しかいつまんでご案内しますが、世界的に感染症で世界が揺らいだのが、代表的にペストとスペイン風邪という病気ですよね。ちなみに、スペイン風邪というのは、1918年から3年ぐらいに渡って流行しましたが、これがどのくらいのインパクトだったかと言うと、3年間で、世界中で累計6億人くらい感染しました。これは、当時の世界人口で、人口の三分の一、3人に1人がスペイン風邪に感染したということで。

武田
武田

凄いことだよね、これは。

篠原
篠原

これが約100年前で、亡くなった人は5,000万~1億人ぐらいだと言われてまして。

武田
武田

1億人というと、おおよそ日本の人口と同じくらいですね。

篠原
篠原

では、日本ではどのぐらいの感染と死者がいたかというと、当時日本の人口は5500万人だったそうですが、3回に渡って流行して、述べ2380万人、人口の約半数が感染したそうです。

武田
武田

これは大変だな。

篠原
篠原

そして、亡くなった人の数は48万人ぐらいということで、病気にかかっても、亡くなるのは100人に1~2人という。なので、比較的、致死率はそこまで高くはなかったようですが。とはいえ、100年前にこうしたものがあって、イギリスの、ある町で人口の8割が亡くなってしまって、社会活動も維持できないようなことが起きたのも、ちょうど100年ぐらい前だったんです。

武田
武田

なるほどね。

篠原
篠原

もう一つ、ペストは14世紀頃に起きて。

武田
武田

室町幕府が成立した頃ですね。

篠原
篠原

そうですね。で、ペストで亡くなった人は1億人ぐらい。この当時世界人口が4億5千万ぐらいですから、大人数が亡くなったんですね。この時も、世界中で流行期が3回あったんです。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

今回のコロナウイルスに関しても言えますが、皆で我慢して流行を抑えても、ぶり返すように3年ぐらいの中で2回目、3回目と波がやってくるという。

武田
武田

安心しちゃいけないということですね。

篠原
篠原

一度では収束しないと過去の歴史から分かりますから。こうした感染症が収束するには2つの方法があって、1つは、全員かかって抗体を手にする。2つ目は、ワクチンが行き渡って抗体を手にすることですね。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

で、ワクチンですが、ニュースでは完成するまでに18ヶ月掛かると言われていますね。ただ、その18ヶ月掛かったワクチンが自分の手元にくるのは、やはり2~3年くらいの期間を要するのではないかと言われていますから…。おそらく経済活動はこのままずっとロックダウン状態ということは。

武田
武田

ないでしょうね。

篠原
篠原

緩んでいくとは思いますが、個人の生活態度や衛生の意識という意味では、3年ぐらい緩められないと歴史が物語っていますね。

武田
武田

でも、日本はよくやっていると思うよ?医療現場で物凄く頑張っている人たちがいるから亡くなった方も少ないし。従って、我々も医療現場に迷惑を掛けないように、自重することが大事だな。

篠原
篠原

そうですね。なるべく病院に行かなくて済むように、健康管理しましょう。

武田
武田

一団となって協力して早めに収束しても、安心をしてはいけないというお話でしたね。ありがとうございました。

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