2022.06.18 「PLAN 75と高齢化について」

おくりびとからのメッセージ

武田
武田

いよいよ梅雨時ということでございますが、梅雨時はお葬式多いですか?

篠原
篠原

この時期は仕事が緩やかになるので、体に優しい時期なのではないかと思いますね。

武田
武田

なるほど。さて、今日のお話は重いテーマらしいですね…。

篠原
篠原

そうなんです。昨日公開になった「PLAN 75(プランナナジュウゴ)」という映画がありまして。

武田
武田

ありますね。

篠原
篠原

ちょうど昨日、長野の長野松竹相生座という映画館へ、公開初日ということでお伺いしました。

武田
武田

はいはい。

篠原
篠原

この映画は今年のカンヌ国際映画祭のカメラドール スペシャル・メンション(特別賞)を受賞したということで話題になっている作品なのですが。テーマとしては、75歳以上の方が、自らの生き死にを選択できるPLAN 75という架空の制度の中で生きるというのを、色々な視点で描く映画でした。

武田
武田

私はまだ見ていないけれど、倍賞千恵子さんが出演しているんだっけ?

篠原
篠原

そうですね。映画全編を通してなのですが、実は丁寧な描写はそんなにないというか、最近の映画はこう見てくださいという解説などが入ることもありますが、余白が十分にあるというような印象を受けましたね。なので、見る人に色々な考えをゆだねているような。

武田
武田

つまり、「考えさせられる映画」ということかな?

篠原
篠原

そうなんです。倍賞さんの表情や仕草から色々なものを読み取るというような映画でした。ちょうど昨日、公式の映画サイトが公開になりまして、そこに載っているあらすじを、ネタバレにならない程度に紹介したいと思います。

武田
武田

お願いします。

篠原
篠原

少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本で、満75歳から生き死にの選択権利を与える制度「PLAN 75」が国会で可決するという。

武田
武田

生き死にの選択権ということは、自分の希望で死ぬこともできるということですか。

篠原
篠原

そうです。

武田
武田

ほぉ~。

篠原
篠原

当初、これが成立したときは様々な物議をかもしていたけれど、超高齢化問題の解決策として世間はすっかり受け入れムードになっていたという。

武田
武田

ほぉ、なるほどねぇ…。

篠原
篠原

この中で、三人の登場人物に焦点が当てられます。

一人目は、夫と死別して一人で暮らす

倍賞千恵子さんが演じるこの映画の主人公、角谷ミチという方。この方は78歳という設定なのですが、ある日高齢であることを理由にホテルの客室清掃の仕事を唐突に解雇されてしまい、住む場所も失いそうな状況で、PLAN 75の申請を検討し始めるという。

二人目は、市役所の職員で、PLAN 75の申請窓口で働いている職員の磯村勇斗さんが演じる岡部ヒロムという方。

三人目は、フィリピンから単身来日している介護職員のステファニー・アリアンさんが演じるマリアという方。幼い娘の手術費用を稼ぐためにPLAN 75の関連施設で高給な仕事をしている方です。

この三人の視点から描かれる映画になっています。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

非常に考えさせられるのが、75歳を超えたら生き死にを選べるという状況下で、作中で国が様々なCMを流していて、笑顔の高齢者が、生きるときは選べないけど死ぬ時くらいは選びたいわと、なんとなくそういう雰囲気を情勢していく描写がありました。

なんというか、結構逃げ場のない描写がたくさん描かれていまして、見ていて苦しく感じましたね。

そんな中で、監督で脚本を書いている早川千絵さんという方が、インタビューで制作意図を答えていたのですが、いわゆる2000年代以降の半ば、日本という国で「自己責任」という言葉が幅を利かせるようになって、社会的に弱い立場の人を批判するような社会の空気が広がったのではないかと。そして2016年に障がい者施設での殺傷事件が起きました。

武田
武田

ありましたね。

篠原
篠原

人の命を、生産性というもので語って、社会の役に立たない人というのは生きる価値がないのではないかという考え方が、事件にも社会にも、実は一部で蔓延しているのではないかと。その中で、PLAN 75というものを通して、社会に問題提起したかったということだったんですね。

武田
武田

なるほどねぇ。

篠原
篠原

私、拝見して、実にメッセージ性の強い映画だと感じました。先程話にも出てきましたが、人間の生き死にを生産性で、紋切り型で切ってしまう問題というのを受け止めたところだったのですが。いわゆる安楽死という感じに受け取るのですが、ここも微妙なニュアンスの違いなのですが、どちらかというと作中では強要される尊厳死というような描かれ方なんですね。

武田
武田

強要される尊厳死ですか。なるほどねぇ。

篠原
篠原

言葉で「安楽死」というと痛みのない選択のある死という受け止め方があって、尊厳死というのは自分の尊厳のある中で選び取るというものですが、これが強要される世界観、強要される社会情勢なんですね。

作中の様々な余白表現の中で、じゃあ結局命とはだれの物なんだろう?という場面が多量に描かれていていたのですが…。

武田
武田

俺75歳なんだよ。PLAN 75はなんで75にしたのか分からないですが、実際にこういうことは起こり得るのかね?政府なり公の物がそうやって決めるという世の中になるのかなぁ。どうなんだろうね?

篠原
篠原

個人的に映画を見て感じたのは、この映画はフィクションで描かれていますが、起きうるかもしれないという気持ちになりましたね。

武田
武田

うーん。

篠原
篠原

早川監督がインタビューの中で、「仕方ないということで抗わない従順な日本人」と仰っていて、決まったことだからといって考えることをやめてしまう人が日本には多いのではないかと。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

この映画は国際交流作品というか、いくつかの国の方が携わっているのですが、その中にフランスのジャーナリストの方が、もしフランスでこの制度が始まったら、きっと大議論が起きて反対運動がおこると思うよ、と仰ったらしいです。

作中で、日本人は受け止めるような描写だけど、本当にこんなことになるの?とフランスの記者さんが質問されて、早川監督は、「日本ではこの制度を受け止められると思います」と仰ったようです。全体主義的な、お国のためというような描かれ方で、そこに誘導されていく日本、というようなことが描かれていたのですが、中々考えさせられる映画だなぁと思いました。

武田
武田

なるほど。似たような映画で、かつて40年くらい前に、「ソイレント・グリーン」というアメリカの映画がありました。チャールトン・ヘストンという方が主役を演じていたのですが、作中で描かれていた時代は地球が荒廃して、食料が全然なく、トマトなどの野菜類が極めて少ない状況。高齢者はその美しかった地球のかつての映像を見て、例えば海に熱帯魚がたくさん泳いでいたりね、アフリカの緑の草原をライオンが走っていたり、そういった美しい景色を見ながら、音楽はクラシックとか、いい音楽を流して安楽死するという。

篠原
篠原

なるほど。

武田
武田

そこまではいいんですが、その安楽死した肉を、国が内緒で缶詰にして売るという。で、食い物がないわけだから、皆さんそれを知らずに買うわけですね。そういったものすごい内容の映画がありました。で、今地球の資源がこれだけ不足して、ウクライナ戦争が起きて、フランスはすごい洪水が起きて、これからすごい食糧難になるのではないかという非常に不安定な状況のなかでしょう?

篠原
篠原

えぇ。

武田
武田

そういった不安定な状況下によりそういった映画が制作されたと思うのですが、一体未来はどうなるのかということで、PLAN 75もそうだけど、地球全体が漠然とした不安を抱いているような時代になっちゃったね。

篠原
篠原

本当ですね。高齢先進国である日本という国の中で、どういった対処をしていくのかというのは世界の関心事だと思います。

武田
武田

うん。

篠原
篠原

その中で、作中では描かれていないけれどとても大事な視点だと感じたことがありまして、先程365日大学の93歳の熊谷加舟さんのお話をされていましたが、高齢になっていくとともに必要になってくるものの一つとして、「目的」というものがあると思っていて。生きがいを感じて毎日新しい発見や取り組み、挑戦するということが、健康に直結しているのではないかと。

武田
武田

絶対にそれありますよ。私は75歳で新しくハーモニカとピアノのデュオを組んだんですよ。これが楽しみでね!昨日なんかハーモニカの練習を三時間もやっちゃったよ(笑)

篠原
篠原

そうなんですか(笑)

武田
武田

デュオを組むと違ったジャンルの音楽ができるの。今まだはジャズ系統を全然やらなかったけど、ピアニストがジャズもできるからやりましょうっていうんで、これやんなきゃと思うと、ものすごく未来が楽しみなんだよ。

篠原
篠原

ジャズの創造性たるや、頭をフル回転で、その時その時を望みますよね。

武田
武田

音楽以外でも良いんですよ。植物育てるとか庭をつくるとかね。目標・目的があるとないとでは、全然人生は違うんじゃないかと思うな。

篠原
篠原

本当ですよね。毎日の生活の中で、誰かのために料理を作る体験とか。

武田
武田

それだって大事ですよ。

篠原
篠原

お一人で暮らしている方だと、例えば地域活動であったりで、自分の役割や目的を見出すと、健康に生きることに繋がるのではないかと思いますね。

武田
武田

例えば入院中にこの放送をお聞きになっている方だってね、自分で文章を書く、お孫さんに教訓を書くことだってできるんですよ。

篠原
篠原

書くということがとても脳に活性化と刺激を与えますよね。当時を思い出しながら書くというのは、脳の中で一度思い出が再生されて、これが脳の活性化にいいという。

武田
武田

私ね、人生をもう一回楽しむというか、過去を思い出してみると、今まで関わった人の顔が鮮明に出てきて、すごく楽しかったね。

篠原
篠原

書くという体験は本当に健康にとっても、ボケ防止の観点でとっても、非常に重要だと思いますね。

武田
武田

ですから、例えば今外に出られない方とかも、色々な形で何か目標を持つことができると思うんだよね。だから、社会全体で目標を持てるような雰囲気を若い方が高齢者につくるというのも大事なことだと思うなぁ。

篠原
篠原

先程の93歳の熊谷さんも、パソコンでオンラインで遠隔地から参加しておりましたが、技術の革新で、興味さえあれば色々な所への参加ができると思うんですよね。

武田
武田

この番組に様々なお便りを寄せていただくというのも脳の活性化になるよな。

篠原
篠原

放送も楽しみになるかも知れないですよね。

武田
武田

ラジオも活字文化と一緒で、イメージしますから。例えば、篠原さんってどんな人なんだろうとかイメージしながら聞くのが脳の活性化になりますから。

篠原
篠原

あとは、不安を抱えている方なら不安を書き出すというのもとてもいいらしいので、是非試してみてください。

武田
武田

今日は重いテーマでしたが、高齢化というのはどなたにもやってくることでございますから、若い方でも未来に目標をもって前向きに生きましょう。

本日もお話ありがとうございました。

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