お墓の引越し(改葬)とは
一度埋葬した遺体や遺骨を、別の場所へ埋葬し直したり、お墓ごと移転することを、お墓の引越し、または改葬と言います。
「お墓が遠くにあるのでお参りができない」「お寺との付き合いが大変」「子どもがいない」などの理由から、お墓の引越しは増加傾向にあり、今では年間約9万件のお墓の引越しが行われています。今後も増加の傾向はしばらく続くものと思われます。
ただ、お墓の引越しは自由にできるわけではなく、いくつかの手続きや届け出が必要であり、注意が必要です。
また、実際にお墓の引越し費用はどのくらいかかるのかも気になるところ。
今回は、他人事ではないお墓の引越し(以下改葬)についてご案内します。
改葬の種類
改葬にはいくつかの種類があります。
1.お墓ごと、新しい場所へ移設する。
2.現在のお墓は残し、遺骨の一部を新しい場所へ移す。
3.現在のお墓を解体・撤去し、遺骨を新しい場所へ移す。(永代供養塔、樹木葬、海洋散骨など)
この場合は、墓じまいとも言えます。
改葬手続きの流れ
私達が引越す際に役所での転出・転入届けが必要になるように、お墓の引越しにも行政上の手続きが必要です。
埋葬に関わる法律として、墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法)があります。無許可で改葬すると、法に触れることになり、罰則をうける場合もあります。
1.菩提寺、本家や家族に改葬の相談
まず、菩提寺や家族、親族と十分話し合ってください。ここをおざなりにすると、後々トラブルのもととなる恐れがあります。
2.新しい納骨先を決め、証明書を発行してもらう
新しい納骨先が決まったら、新しい墓地の管理者から「受入証明書」「永代使用許可書」などを発行してもらいましょう。また、すでにあるお墓に納骨したい場合は、お墓の持ち主から「埋葬承諾書」をもらってください。
3.現在のお墓の管理者から「埋葬証明書」を発行してもらう
4.現在のお墓がある自治体の役所で「改葬許可申請書」をもらい、記入して提出。「改葬許可証」を発行してもらう
「改葬許可申請書」は遺骨一人につき一枚必要です。また、提出の際は「受入証明書」「埋蔵証明書」を添付します。
5.現在のお墓から遺骨を取り出す
お墓から遺骨を取り出します。墓石の移動は石材店に依頼するほうが良いでしょう。
6. 墓石を撤去(移送)し墓地は更地にして管理者に返却する
その後墓地を使用しない場合は撤去し、更地にしてお墓の管理者に返却する必要があります。その際、閉眼供養(魂抜きの法要)をしてもらってください。
7. 新しいお墓の管理者に「改葬許可証」を提出し納骨する
新しいお墓へ埋葬する場合は、開眼供養をしてもらってください。
改葬にかかる費用は?
改葬にかかる費用は、思いの外高額になる場合もあります。よく調べ、納得いく方法で改葬しましょう。具体的には下記の費用が必要になります。
1. 古いお墓にかかる費用
① 古いお墓の撤去費用:10万円~30万円ほど。
お墓が山奥にあったり、重機が入らない場合などは、別途追加工事費が発生することがあります。
② お骨をお墓から出す費用:一体3万円〜。
石材店に依頼してお骨を取り出す場合の費用です。
③ 閉眼供養のお布施:10万円から15万円ほど。
お寺によって違いますので、まずは相談してください。「お気持ちで」と言われることもありますが、お世話になったお寺であれば、10万円から15万円ほど包めば良いでしょう。
④ お寺からの離檀料:〜50万円ほど。
「お気持ちで」と言われることも。お墓を処分し、菩提寺との関係を解消する際、離壇料が必要な場合があります。後々トラブルにならないよう、事前に確認しておく方が良いでしょう。
2. 新しいお墓にかかる費用
① 永代使用料:20万円〜200万円、平均60万円
墓地の使用料として墓地の管理者に払います。地価や大きさでで価格は千差万別です。一度払えば、使用権は永代にわたり続きます。
② 墓石代、工事代:100万円〜300万円
新たに墓石を購入する場合に必要となります。墓石の制作費、設置工事費として石材店に支払うお金です。
③ 墓石の運搬費用、工事費 20万~80万円
墓石を移転する場合に必要となる費用です。墓石の大きさや、移動距離によって変わります。また、新たに外柵などを設置する場合はさらに追加費用がかかります。運送会社での運搬の場合、約100km移動で15万円〜20万円程度かかります。
④ 管理料:5千円〜2万円
新しい墓地の管理者へ定期的に支払うお金です。年払いの場合が多いようです。
⑤ 入檀料:10万円〜30万円
新しい墓地がお寺の管理地である場合に必要なことがあります。お寺によって違うので、事前に確認してください。
⑥ 納骨手数料:1.5~3万円
納骨堂への改葬の際必要になります。
⑦ 開眼供養のお布施:3〜5万円
新しいお墓の開眼供養をしてもらう費用です。
3. その他の費用
① 手続きにかかる費用:数千円程度
役所での手続きの際発生する費用、霊園への事務手数料などです。
② 洗骨費用:一体2万円〜 粉骨費用:一体1万円〜
納骨堂へ改葬する場合、お骨の状態によって洗骨が必要になります。骨壷は密閉されていないため、カビやニオイが発生することがあるからです。海洋散骨や樹木葬の場合は、粉骨が必要になります。手元供養は、供養の方法によって、洗骨が必要な場合と、粉骨が必要な場合とがあります。
③ 輸送費、交通費:実費
お骨を郵送する場合の費用や、供養の為にお墓に行く為の交通費です。お骨はゆうパックでのみ可能です。他の宅配業者で送ることはできませんので注意してください。料金は通常のゆうパック料金と同じですが、損害賠償の対象外となるので注意が必要です。また、海外へお骨を送ることはできません。「お引き受けできないもの」の項目に遺骨が含まれているからです。
様々な改葬先
改葬先として、新しい墓地に新しいお墓を設置する以外にも、選択肢があります。
・納骨堂、永代供養墓
最初から他者の遺骨と一緒に埋葬する合祀と、一定期間(三十三回忌など)個別に安置してから合祀する場合とがあります。
・樹木葬
他者の遺骨と一緒に埋葬する合祀と、骨壷は個別で埋葬場所が一緒の共同埋葬、骨壷も埋葬場所も別の個別埋葬、といくつか種類があります。また、骨壷ではなく、粉骨して別の容器に入れることもあります。
・海洋散骨
故人の遺族や友人が船を貸し切る個人散骨、同時に複数のグループで乗り合わせる共同散骨、お骨を預けて専門スタッフが行なう代行散骨があります。あらかじめ、洗骨・粉骨をしておきます。
・宇宙葬
バルーンに入れて成層圏付近で破裂する散骨、ロケットを打ち上げ人工衛星の軌道上にしばらく留まったあとは流れ星になる散骨など、いくつか種類があります。ロケットに乗せられるお骨は数グラムのみとなります。
・手元供養
全ての遺骨、または一部を手元に置いて供養することを言います。
・遺骨すべてを骨壺に納めて安置する
・遺骨の一部を手元供養専用の小さな骨壺に納める
・遺骨でモニュメントを作る
・専用のペンダントにごく小さな遺骨を納めてアクセサリーとして身に付ける
・遺骨をジュエリーに加工する、
など様々な方法があります。
また、お骨を全てお墓に埋葬したり散骨するのではなく、一部を手元に残したり、いくつかの供養の方法を組み合わせることもできます。
数年であれば骨壷のまま安置できますが、骨壷は密閉されていないので、長期間手元に安置する場合は乾燥・粉骨処理し、密閉できる容器に保管するなどの対処が必要です。
まとめ:無縁墓にならないために
お墓を管理できずそのままにしておくと、無縁墓となってしまいます。むやみに撤去できず、売ることも貸すこともできない為、墓地管理者や多くの方に非常に迷惑をかけることになります。
改葬には、様々な手続きが必要であり、労力も費用もかかります。また、家族や親戚が納得するまで時間をかけて話し合う必要があります。
現在、改葬には様々な選択肢があり、今後ますます増えていくと思われます。自身が元気で動けるうちに、一度検討してみてはいかがでしょうか。