『遺言』という言葉をきいて、皆さんはどんなことを思い浮かべますか?
遺言は自分の築きあげてきた財産の行き先を左右する大切な制度です。
その遺言制度が今年から変わります。
遺言制度とは
財産の行方について、自身の意志を伝えるための文書である【遺言】を用意するには、三つの方法があります。
- 自筆証書遺言
遺言者が遺言の内容の全文を手書きで作成する。 - 公正証書遺言
遺言者が遺言の内容を話し、公証人が文章にまとめて作成する。 - 秘密証書遺言
遺言者が手書きで作成し、公証人が封印して保管する。
↓くわしくはこちらのページをご覧ください。
そして このうち、「自筆証書遺言」について、2019年1月から制度が変更になりました。
制度の変更点
変更点のポイントは2つ
「自筆証書遺言」制度の変更点はいくつかありますが、重要なのは二つです。
- 遺言書に添付する財産目録をパソコンで作成できる。
- 作成した遺言書を法務局で保管する制度ができる。
一つずつご紹介していきます。
1.遺言書に添付する財産目録がパソコンで作成できる
2019年1月13日から、遺言書に添付する財産目録をパソコンで作成できるようになりました。
これまで「自筆証書遺言」は、添付する財産目録も含め、全文を手書きで書く必要がありました。
そのため、作業量が多かったり、書き写す際に間違えるなど不便を感じた方も多いのではないでしょうか。
今回から、相続財産の目録については、手書きでなくてもよくなります。
具体的には、パソコンで作成した目録や、不動産登記簿謄本や通帳のコピーなど、自書によらない書面を添付することができます。
注意していただきたいのはパソコンが使えるのは、添付する書類だけですから、遺言書そのものは手書きでなけれはいけないということです。
お間違えのないようお気をつけください。
2.法務局で遺言書を保管してくれる
「自筆証書遺言」は、保管方法が指定されていません。
そのため、相続の時点で見つからなかったり、複数のバージョンが出てくるなどの問題がありました。
さらに、相続人が自分に不利になる内容の遺言書を捨てたり、書き換えてしまうことも、不可能ではありませんでした。
2020年7月10日からは、法務局が「自筆証書遺言」を保管する制度ができます。
法務局は、単に遺言書を預かるだけではなく、次のような作業をしてくれます。
- 遺言書が法務省令で定める様式に合っているか、チェックをしてくれる
- 遺言書の原本を保存するとともに、画像情報を法務局同士で共有する
- 相続人などからの請求に応じて、遺言書の内容や、遺言書を預かっている証明書など提供する
- 相続人のうち、誰かが遺言内容の確認などをすると、他の相続人に通知して、遺言書が存在することを知らせる
これまでのように自宅などで保管するよりも、ずっと確実に遺言書を残すことができます。
また、「自筆証書遺言」が有効になるためには、家庭裁判所で「検認」という手続きをする必要があります。検認は、数週間かかることもあり、その間は、相続手続きが止まってしまいます。
しかし、法務局で預かった遺言書については、家庭裁判所での検認手続きが不要になります。
遺言書の内容が確認できれば、すぐに相続の手続きを始めることができます。
制度改正には『時差』があります
2019年1月から、遺言書に添える財産目録に、パソコンが使用できるようになったことで、作業量が大幅に減り、遺言書を作成する敷居は大いに下がることになりました。
遺言書の作成を考えている方は、まずは目録に載せる財産の確認と書類のコピーから始めてみてはいかがでしょうか。
一方、法務局による遺言書の保管制度に関しては、2020年7月からの施行となっており、まだ期間があるため詳細が明らかではない点もあります。
お間違えのないよう、お気をつけください。