2017.02.18「霊柩車の歴史」

おくりびとからのメッセージ

武田
武田

おくりびとというのは、結構県内にも増えたんでございますか?

篠原
篠原

そうですね。県内にも沢山の会社の参入があって、今挙がるだけでも3、4社ぐらい、納棺師派遣をしていらっしゃる会社がありますかね。

武田
武田

なるほど。で、今日は「霊柩車」のお話。私はまだ霊柩車乗ったことがないから、非常に興味深いです。

篠原
篠原

意外でした。武田先生はご長男ではない?

武田
武田

三男なんです。だから乗れないんだな(笑)

篠原
篠原

私も次男なので、助手席には乗ったことがないです。

武田
武田

でも、運転したことはあるでしょ(笑)

篠原
篠原

運転することは度々ありましたが(笑)

武田
武田

例えば、葬祭センターだとか、そういうことをやっておられる方は、霊柩車をお持ちなの?

篠原
篠原

そうですね。最近の会社は、ほぼ持っていると思います。唯一例外なのは東京で、東京の葬儀屋さんはあまり霊柩車を持っていないですね。

武田
武田

何故ですか?

篠原
篠原

なぜ持たないのかと言うと、持つ必要がない。

武田
武田

どうして?

篠原
篠原

霊柩車の専門業者が十分にあるので、自社で態々お金を出して霊柩車を用意しなくても、必要なときだけ呼べばいい訳なんです。

武田
武田

そういうことか!さあ、今日は霊柩車のお話ということで、色々質問しますけれどもいいですか?

篠原
篠原

もちろんです。

武田
武田

まず、霊柩車の運転をするのに、特別な免許は必要なの?

篠原
篠原

何となく二種免許が必要なイメージがあるのですが、通常の一種免許でいいです。

つまり、運転をする為に特別な免許は必要ないですね。

武田
武田

では、私も運転できるのですか?

篠原
篠原

はい。もちろんです。

武田
武田

あと、霊柩車を買うときに、自分たちでこういう模様にしてくれとか、色々発注するんですか?もう既製品があるの?

篠原
篠原

両方ですね。フルカスタマイズでも勿論作れますし、既製品から選ぶこともあります。

霊柩車と並んで寝台車というものがありますが、病院などからご自宅へ連れて行ったりする寝台車は、割と既に決まった形があって、既製品を購入することが多いです。

武田
武田

なるほど。あと、何cc以上とか決まっているんですか?

篠原
篠原

結構いい質問ですね。実は、普通自動車以外の霊柩車もありまして、九州で本当に僅かに見られるのですが、軽自動車の霊柩車というのがあるんですよ。

武田
武田

軽自動車の霊柩車?じゃあ、小さいね。

篠原
篠原

非常に小さいです。運転者以外に1人しか乗車できないのですが、660ccですね。

武田
武田

あら、そんなに小さいやつもあるんだ。

篠原
篠原

そして黒ナンバー。これは全国であまり走っていなくて、軽霊柩という非常に特殊なものになりますね。

武田
武田

一般的には乗用車タイプということですね。

篠原
篠原

そうですね。通常はセダン型の車を改造することが多いと思います。寝台車の場合は、ミニバンとかバン型を改造することが多いと思いますね。

武田
武田

あと、何人乗りが多いんですか?亡くなった方も人数に入る訳?

篠原
篠原

それもいい質問ですね(笑)実は、亡くなった方は人数として数えないんです。

武田
武田

じゃあ、何人乗せてもいいの?

篠原
篠原

実は、手荷物扱いといいますか、正式には貨物扱いなんです。霊柩事業者は、トラック業界に所属して、貨物業の許可を取る必要があって。

武田
武田

トラック業界!死にたかないね~…荷物扱い。

そうすると、3、4人乗せてもいいんですか?

篠原
篠原

それだと、過積載になるので。

武田
武田

積載人員は1名って決まってんだね。

篠原
篠原

つまり、2人同時に運んではいけないと法律で決まっているんですよね。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

以前よく見られた宮型の霊柩車でいくと、積荷の関係といいますか、そもそも車自体、非常に重くて。

武田
武田

そうですね。

篠原
篠原

運転席と助手席の2名分しか、確保が難しいという。

最近よく見られる洋型、リムジン型といえばイメージが付き易いですが、これは大体、運転手の他に4名ぐらいですね。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

あと、実はバス型の霊柩車というレアケースなものがあるのですが。

武田
武田

そういうのもあるんだ。見たことないねぇ。

篠原
篠原

私自身、以前バス型の霊柩車の申請をして取得したこともあったのですが、バス型だと20数名くらい。

武田
武田

そんなに乗れるんだ。

篠原
篠原

それで一緒に斎場まで行けるようなものもありますね。

武田
武田

なるほど。

霊柩車って、宮型とかリムジン型とかありますが、時代によって流行というのはあるのですか?

篠原
篠原

あります。実は、その流行の先端を走っているのが、天皇家なんです。

武田
武田

そういうことですか。

篠原
篠原

例えば今、宮型の霊柩車って見なくなりましたよね。

武田
武田

ああ、そうだよね。

篠原
篠原

これは、1989年に昭和天皇崩御の際まで主流だったのが宮型の霊柩車だったのですが、今上天皇が洋型の霊柩車を事前に準備しておりまして、洋型の霊柩車が大体的に世の中に知らしめられて。

武田
武田

そうだったのか。へぇ~。

篠原
篠原

また、時代的にも亡くなる人が増えてきて、綺羅びやかな宮型の霊柩車が沢山走っているのも配慮が必要みたいな風潮もあって。

武田
武田

なるほど、街の景観という問題があるんですね。

篠原
篠原

そうなんです。近年だと、宮型霊柩車の乗り入れ禁止なんていう所も出てきていて、200ヶ所以上ありますね。

武田
武田

どういう所が禁止するんですか?

篠原
篠原

自治体です。例えば、火葬場の運営といえば自治体です。単独で運営する所もあれば、地方に行けば広域連合みたいな形で管理します。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

ということもあって、都市部では宮型霊柩車は全く見かけないですね。

武田
武田

そうなんですね。

篠原
篠原

宮型霊柩車の流行の先取りをしたと言われている人が、実は武田先生の母校を作られた大隈重信(おおくましげのぶ)さんでして。

武田
武田

あ、宮型の霊柩車をご自分が亡くなられた時に使ったの?

篠原
篠原

そうなんです。宮型の走りは、実は大隈重信さんのお葬儀の時でして。

武田
武田

へぇ~、これも知られていないねぇ。

篠原
篠原

1922年、大変な役職を勤められた大隈重信さんのお葬式は国民葬という形で、現在の日比谷公園で行われまして、この時は30万人規模の、非常に大規模なお葬式でした。

ここで使われた霊柩車が、宮型霊柩車の原型と言われていて、小型のトラックの上に白木の輿を乗せ、そこに棺を納めたそうです。

武田
武田

面白いもんですねぇ。それがあって、みんなが真似するわけだな。

篠原
篠原

そうなんです。その後、宮型霊柩車が時代を象徴する、丁寧な形であると定着したようですね。

武田
武田

そういうことだ。

篠原
篠原

その宮型霊柩車といえば、欠かせない会社がありまして、米津工房というのですが。

武田
武田

聞いたことないですね。

篠原
篠原

神奈川県の会社だったと思うのですが、時代と共に、2002年に破産してしまっていて。

武田
武田

あら、そうですか。

篠原
篠原

で、その時のメンバーが、今の霊柩車を作っています。日本の霊柩車の歴史を辿ると、その米津工房にあたります。非常にマニアックな情報ですがね。

武田
武田

米津工房、覚えておきましょう。

篠原
篠原

この米津工房が手掛けた宮型の霊柩車は、ある時期に関して言えば、国内車100%の時期もあったようです。2000年代初頭でもシェアが6、7割ぐらいだったと。

武田
武田

凄いねぇ!これがどうして廃れちゃったの?

篠原
篠原

宮型の霊柩車の流行が廃れていったということで。

武田
武田

そういうことか。リムジン型にも進出していけばよかったのにね。

篠原
篠原

色々と経緯があった中で、と思いますね。

象徴的な宮型霊柩車を作る会社が無くなりまして、近現代の洋型の霊柩車が主流になりましたので、宮型の霊柩車って、いわば、走る文化遺産といいますか。

武田
武田

そんな感じだよねぇ。ということは、宮型は大正、昭和の象徴的な霊柩車ってことになるんだね。

篠原
篠原

そうですね。50年もすれば、歴史の教科書に載る可能性すらありますよね。

武田
武田

そうだよね。で、もう1つ質問。霊柩車で旅していいの?

篠原
篠原

霊柩車で(笑)

緑ナンバーですが、もちろん旅をすることはできます。

武田
武田

おぉ~。これで旅したら、結構目立つわなぁ。賊に襲われることはないんじゃないの?

篠原
篠原

本当にそうですね。実は霊柩車を運転していると気づくことがあって…。

武田
武田

どんなこと?

篠原
篠原

宮型霊柩車を運転していますと、対向車が避けてくれるんですよね。

武田
武田

(笑)

篠原
篠原

救急車ではないけれども、非常に走りやすいですね。

武田
武田

いいねぇ、それ。

篠原
篠原

まぁ、旅行のような用途で使えるし、特に規則はないかと。

武田
武田

なるほど。で、普通の車に比べて、値段は何割増しぐらいになるもんかね?

篠原
篠原

宮型霊柩車の時代は、一台およそ2千万円だったんです。

武田
武田

おぉ~。高級車だねぇ!

篠原
篠原

で、米津工房のやり方があって、上の宮型は、ある意味ずっと使えるんですよね。ただ、下の、ベースになっている車は10年単位で変えるので、ベース車両は変えて、宮を乗せ変えていたようです。

武田
武田

それは非常にいいですよね。もったいない精神だね。

篠原
篠原

なので、2代目以降になると宮代分、金額が減るようですが。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

で、現在の一般的な霊柩車は、新車で購入して、改造して5、600万円、高くても700万円ぐらいですね。

武田
武田

じゃあ、結構安くなったんだ。

篠原
篠原

そうですね。これが新車のバン型の相場になりますね。そして、リムジン型になると、1000万~1500万円ぐらい。

武田
武田

結構高価な物でございますなぁ。

篠原
篠原

そうですね。

武田
武田

で、我々は車検というものがあるよね?車検はあるんですか?通常の車検と一緒なの?

篠原
篠原

事業用貨物の車検のルールに従うので、法定の1年の車検というのと、加えて3ヶ月ごとに点検する必要があります。

武田
武田

ほぉ。

篠原
篠原

乗る距離は、ある意味たかが知れていまして、斎場もしくは自宅から火葬場へ行くだけなので、距離としては全然乗らないですが、3ヶ月ごとに全ての点検をしていますね。

武田
武田

なんでそんなに厳しい規則があるのかしら?やっぱり遺体を乗せているということがあるのかなぁ。

篠原
篠原

でも、運送会社のヤマトさんや佐川さんの車も、3ヶ月ごとに点検していますので。同じ様に、そのルールに則れば、まず問題は起きないということですね。

武田
武田

なるほど。色々質問しましたが、それ以外に何かありますか?

篠原
篠原

そうですね。例えば、霊柩車といえば車の形が思い浮かぶのですが、実はそれよりも先に登場した霊柩車として、霊柩列車というものがあるのです。

武田
武田

列車もあったの?知らないなぁ。

篠原
篠原

霊柩の列車を設えるというのは、車よりも高額になってきますが。

武田
武田

そうだよなぁ。

篠原
篠原

では、誰がこれを利用したのかというと、天皇家なんです。そして、霊柩列車がなぜ必要だったかというと、当時、皇室の皆さんは明治、大正、昭和と、東京で暮らしていますよね。

武田
武田

はい。

篠原
篠原

ただ、明治天皇の時代、それから大正天皇の時代のお墓は、京都の伏見にありまして。ですから、東京で亡くなられたとして、 京都のお墓まで運ぶ必要があって。

武田
武田

なるほど。

篠原
篠原

この時に、どう運ぶのかというところで、実は、明治時代に東海道本線が通って、それを使って京都まで乗り継げる形で、霊柩用の電車が利用されたようですね。

武田
武田

はい。

篠原
篠原

で、明治の時代に初めて列車型霊柩車に乗った方が、英照皇太后(えいしょうこうたいこう)といいまして、明治天皇のお母さんでした。

武田
武田

なるほどねぇ。

篠原
篠原

で、この霊柩の列車は3台作られていまして、一番最初が明治天皇のお母さん、2台目が明治天皇で、最後、大正天皇までが京都の伏見へ向かわれて。

武田
武田

そういうことなんだ。皆さん霊柩車について、今日は面白いことを聞けたのではないでしょうか?

篠原
篠原

マイナーな話で、少し恐縮ですけれども。

武田
武田

でも皆お世話になるよ、最終的には。

篠原
篠原

そうですね。

武田
武田

ということで、今日は興味深い霊柩車のお話をしていただきました。ありがとうございました!

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