自分の意志を伝えるために
遺言は財産を多く持っている人がすることで、自分には関係ないと思う人が多いようです。
しかし実は財産の少ない人ほど後に残された家族への配慮が必要になります。
財産をできるだけ有効に使うために、遺言が効力を発揮することも多いのです。
自分の意志を死後、法的に有効なものにするためには遺言の作成がいちばん確実です。
遺言の種類と特徴
普通方式の遺言(一般的な遺言)として次の3種類の遺言があります。
自筆証書遺言
難易度 ★ (最も簡単)
書式 全文と日付を自筆する。署名、押印が必要
費用 ほとんど掛からない
証人 不要
保管 本人、推定相続人、遺言執行者、受遺者、友人など
秘密性 遺言の存在、内容共に秘密にできる
紛失、変造の可能性 共にある
検認 必要
有利な点 費用がほとんど掛からず、証人が必要でない。また、いつでもどこでも簡単に書け、新たに作り直すことも容易に出来る。
不利な点 紛失、変造、隠匿などの可能性が高い。遺言の要件を満たしていないと無効な遺言となる可能性がある。家庭裁判所での検認が必要。
公正証書遺言
難易度 ★★★★★ (難しい)
書式 公証人が作成。本人と証人、さらに公証人の署名、押印が必要
費用 公証役場手数料、証人依頼代
証人 二人必要
保管 原本は公証役場、正本と謄本(写し)は本人、推定相続人、受遺者、遺言執行者など
秘密性 遺言の存在、内容ともに秘密にできない。証人から内容が漏れる可能性がある
紛失、変造の可能性 紛失の場合再発行出来る、変造の可能性はない
検認 不要
有利な点 家庭裁判所での検認が必要ない。公証人が作成するので、無効な遺言書となること、変造されることが少ない。紛失しても謄本を再発行してもらえる。
不利な点 費用が余分に掛かる
秘密証書遺言
難易度 ★★★ (やや難しい)
書式 代筆、パソコン可。署名、押印が必要
費用 公証役場手数料、証人依頼代
証人 二人必要
保管 本人、推定相続人、遺言執行者、受遺者、友人など
秘密性 遺言の存在は秘密にできないが、遺言の内容は秘密にできる
紛失、変造の可能性 共にある
検認 必要
有利な点 公証役場に提出するので、作成日が特定できる。費用があまり掛からない。
不利な点 紛失、変造、隠匿などの可能性がある。遺言の要件を満たしていないと無効な遺言となる可能性がある。家庭裁判所での検認が必要。
法的効力のある遺言事項
相続財産に関する事項
- 相続分の指定 / 法定相続分を変更できる
- 遺産分割方法の指定 / 誰に何をあげるか
- 遺産分割の禁止 / 五年間遺産分割を禁止し、相続人で共有させられる
- 遺贈 / 遺言で財産の贈与ができる
身分に関する事項
-
- 推定相続人の廃除 / 財産をやりたくない人を排除できる
- この認知 / 生前認知できなかった子を認知して、財産を相続させられる
- 後見人・後見監督人の指定 / 未成年の子を後見してもらう人を指定できる
その他
- 祭祀の主宰者の指定
- 遺言執行者の指定 / 遺言内容を執行してくれる人を決められる
エンディングノートという選択肢
法的拘束力を必要とせず、家族に伝えておきたい事柄をまとめるのにはエンディングノートを活用するのがよいでしょう。
終末期の医療処置や葬儀のやり方、自分の死を伝えてほしい人たちの情報など、遺言でなくとも自分の意志を伝える手段としてはとても有効です。
よろしければエンディングノートのページも御覧ください。