長いこと寝たきりだった親、介護をしていた親、入院生活が続いた親が亡くなった時、残っているお金は一体どのくらいでしょうか。
中にはほぼ0円、という遺族もいることでしょう。
年金で賄えると言っても、高齢者の医療費が一般の人よりは低額と言っても、入院中の部屋や着替え、食事代は別になります。介護費用も、介護度が上がるたびに、入居費用は高くなっていきます。
そこに追い打ちをかけるように葬儀代が100万円、200万円となれば、遺族は自分の生活にも支障が出るかもしれません。
よく安く葬儀ができます、と広告を出している企業でも、戒名や墓地、墓石の費用は別になってきます。
人間は生きている間もお金がかかりますが、死んだときもお金がかかるものですね。
そこで葬儀費用を親が残したお金で行う方法について、お話をしましょう。
香典と香典返し

葬儀費用で先に用意すべきお金は、僧侶に支払う御布施などです。
戒名代や食事代、御車代などになります。
わかりやすいお寺では、一般的なものから最上級の戒名まで3から5段階くらい用意してあり、これで〇〇円です、と前もって説明してくれます。
あまり嬉しいお話ではありませんが、親の銀行口座にお金があれば、まずはすぐに出金しましょう。
一度で出金できる額が決まっているため、お通夜や葬儀の日までの間に、数回にわけて100万円くらいを出金しておくのがおすすめです。
葬儀会社に支払う葬儀費用は、火葬までの葬儀がすべて終了してからの請求になります。
そのため、香典から支払うことも可能です。
一般的に香典返しは香典の金額の3割から5割といいます。
半返しという言葉を聞いたことがあるでしょう。
ほかにも地域によっては、返し不要の「新生活」という制度があり、こちらは香典返しを渡すことはありません。
渡すことがあっても、1000円くらいのハンカチなどが一般的です。
そのほかに通夜ぶるまい、精進落としなどの食事もありますが、本来はそれを含めての半返しなので半分のお金は葬儀費用に充当することは可能です。
どうしても親の介護や入院で、お金が足りないかもしれないと思ったら、親の口座に入っているお金が底をつきそうだったら、香典返しを含めて支払える額に抑えましょう。
昔のように派手な葬儀や、見栄を張った香典返しより、残された遺族の生活が大切な時代です。
最近は葬儀費用くらいはといった生命保険などもありますが、こういったものも良く調べると意外と掛け金が高くなります。
わずかな年金で生活をしている高齢者がお金を残すということは、すでに難しい時代かもしれません。
通夜ぶるまいと精進おとしの費用

昔の葬儀は、通夜の後も葬儀の後も、自宅の広間で近所の人が料理したお清めのための酒に、煮物や漬物、海苔巻きやいなり寿司などがふるまわれました。
これが通夜ぶるまいや精進落としの料理として、お手伝いのあと参列した近所の人も葬儀に来た親族も、それをあたりまえのように頂いていたものです。
しかし通夜や告別式など葬儀そのものを会場で行うようになった近年、こういった食事も会場でふるまうのが一般的です。
通夜ぶるまいにかかる費用は、僧侶と亡くなった人への影膳のほか、通夜のあと残る参列者への食事代です。
およそ一人2500円から3000円になり、50人参列の場合は25人分を用意しましょう。
参列だけで帰る人のために、お清めのお酒や飲み物、うどんやそうめん、お菓子などを持たせる場合もあります。
こちらは1000円から1500円程度になることを考慮してください。
精進落としの料理も同じで、まずは僧侶と影膳が必要となります。
しかし僧侶が多忙な場合は、通夜と告別式合わせて、食事代5000円から1万円と包むこともあり、その場合は僧侶の数は不要です。
告別式の後の精進落としはほとんど親族になりますので、前もって残る人の数がわかっていれば、無駄に用意する必要はありません。
精進落としは、5000円から8000円くらいが相場です。
ただし、昔のように家族総出で告別式に参加し香典は代表者が2万円、精進落としは6人で食べて帰るという親族もいます。
お酒を大量に注文する人もいて、計算外の出費になることもあるので注意しましょう。
葬儀費用は親のお金で支払える?

葬儀代で面倒をかけたくない、というCMのセリフがあるように、親のお金で葬儀代を出すことはできます。
親が自分で死亡保険に加入していれば、葬儀費用のためにつかう保険と考えて間違いはないでしょう。
しかしこういった保険の加入条件を見たことはありますか?
ほぼ掛け捨てのうえ、満80歳まで、満85歳までとなっているのです。
つまり、85歳を超えた親が死亡した場合は、この保険は解約済みとなり、死亡しても葬儀費用として使うことは不可能となります。
人生100年時代、保険会社も考えたものです。
そして次に利用できるのは、親の銀行口座に残っているお金や投資をしていたお金です。
しかし銀行口座のお金は、一般的に1日5万円になります。
前もって個別設定をしておけば100万円、200万円を引き出すことは可能ですが、これ以上の金額となるとほとんどの銀行で受けてもらうことはできません。
さらに自分名義の口座ではないため、いろいろと制約があることも考えられるため、数日に分けて引き出すのがいいでしょう。
成年後見人
もし親が認知症などで、遺族が「成年後見人」になっていれば、生前のうちに銀行にもその旨を届けておきます。
すると、銀行の窓口ではいつでもその人が出金することが可能です。
さらに親の口座がある銀行と、後見人の住む地域が離れていたり、仕事で窓口開設中に行くことができないなどの理由があれば、新たにキャッシュカードも作ってもらえます。
前のキャッシュカードや通帳は使うことはできませんので、注意してください。
投資
若い親の中には、投資信託やNISAなどでお金を増やしている人もいます。
一般株などもありますが、種類によってすぐに現金化できるものもあれば、現金化できたとしても、本人が死亡していると名義が違うと時間がかかるものもあります。
投資などを利用している人は、予め種類のメリットデメリットを理解し、現金化するための必要事項や方法を家族に伝えておきましょう。
終活ノートに書いておくのも忘れないようにしてください。
投資信託の種類によっては、スマホのアプリで現金化することも可能です。
この場合は、口座番号やIDなど、家族にだけわかるところに残して置くことも大切です。
もちろん、こちらを葬儀代に利用せず普通の財産として残せれば、遺族たちの遺産となります。
葬儀代の助成金

葬儀を行うと、その後自治体から5万円の助成金が支払われます。
必ず「死亡診断書」と「会葬礼状」を持って役所に届けてください。
このほかにも年金や健康保険の手続きをすることで、支払いすぎていたお金は戻ってきます。
また、亡くなった親がすでに配偶者と死別、離別していた場合、親の面倒を見ていた遺族が最後の年金を受け取ることも可能です。
年金額は様々ですが、親が受け取るはずだった年金の半分くらいは受け取ることができるので、これも葬儀費用に充てることができます。
このように、葬儀を行った後に、役所や社会保険庁に届けを出すと、5万円から20万円くらいの助成金と年金の未払い分が受け取れるので、葬儀費用やその後の法事、墓石や位牌の費用として使ってください。
まとめ

人生100年時代の今、現役で働けるのは65歳からせいぜい70歳までです。
預貯金の利子は年利0.001%。
老後の生活を考えると、すでに葬儀費用を貯蓄することは難しいのかもしれません。
残された遺族のためにも、そして初めて喪主になった人のためにも無駄のない、誰もが納得のできる葬儀になるよう、葬儀会社ともしっかり話し合って決めましょう。