葬儀社の手を借りず、自分たちの手でお葬儀を組み立てるDIY葬。
葬儀社の施設利用料や手数料などがなく、必要なものを自分たちの手で選別できる分、葬儀費用はぐっと安く抑えることが出来ます。
しかし、その分業者に任せることが出来ていた様々なものの手配を自分たちで行なう必要があります。
故に、DIY葬では通常のお葬式以上に多くの事前準備が必要になってくるのです。
いざという時にあわてて準備を始め、必要だったものが揃わない。
そんな事態にならないよう、事前に情報を集め、準備を進めておくことが大切です。
今回はDIY葬に必要な準備項目をご説明していきます。
具体的には
- 周囲への説明
- 事前に購入しておくもの
- 必要情報の確認
この三項目に分け、ご紹介していきたいと思います。
1.周囲への説明
まずはじめに行わなければならないのが周囲の方、特に親族への説明です。
「葬式は葬儀社に任せるもの」
この認識は広く社会に浸透しており、現代のお葬式はまず葬儀社を選ぶことから始まります。
その中でDIY葬はまだまだできたばかりの葬儀形式であり、認知度は決して高くありません。
加えてすべての準備・施行を親族中心に行うDIY葬は、周囲の方の手伝いが必要になってくる場合があります。
親族への説明を怠り、親族のDIY葬への理解が不十分なまま進めてしまうことで、聞いていた話と違うなど認識の齟齬が生まれてしまう恐れがあります。
こういったトラブルのリスクを少しでも下げるため、必ず親族の同意は得ておくようにしましょう。
2.事前に購入しておくもの
- 棺
ご遺体を入れるための棺です。実は、全国的に多くの火葬場ではご遺体が棺に納棺されていない場合、たとえご家族や葬儀社がそのまま運び込んだとしても火葬をしてもらえないのです。
なので棺は必ず用意する必要があります。 - 骨壷・骨箱・風呂敷
火葬後に残ったお骨を保管するための骨壷と、それを保管するための骨箱、風呂敷です。云々…。七寸ツボをご用意しています。
※これら必ず必要になるものは『DIY葬セット』の中に含まれています。
棺や骨壺は一般の方には手に入りずらい代物でした。棺はサイズも大きく、宅配便で送るにもいろいろと制限が多いため、用意するのは非常に困難でした。
しかし、折り畳み式の棺の登場やインターネット通販の発展により、お葬儀に必要なものを誰でも手軽にそろえることが可能となりました。
あると便利なもの
これらは必ず必要、というわけではありませんが、いざという時に手元にあると重宝するものです。参考にしてみてください。
- 担架布団
ご遺体を搬送する際に重宝するのが担架布団です。
この布団は葬儀業者も搬送の際に使用しているもので、横になっている人を運ぶためのものです。特徴は裾をまくり上げたところにある布製の取っ手です。この取っ手を持つことで、安定してご遺体を運ぶことが出来ます。また、防水性もしっかりしているため、広げてそのままご安置用のしーつとしての流用も可能です。
インターネットなどで5~8千円程で購入することができます。
人間の体は皆さんの考えている以上に重く、そして重心のバランスが偏っているため運びずらいものです。専門の搬送業者の方でも、誤ってご遺体を落としてしまった、という事例は存在します。
そのようなことを防止するため、担架布団のご用意をお勧めします。 - メイクセット
これは主に死化粧やエンゼルケアに使用します。死化粧・エンゼルケアとは、簡単にいうと、ご遺体を清め整えることを指します。
ご遺族の方や、別れを惜しむ方々にとっても、葬儀の死化粧次第で、故人の生前からの印象が大きく変わりうるものであり、より生前に近く美しい姿で旅立つために必要なものです。
同じ意図で除菌用アルコールや脱脂綿なども用意しておくといいかも知れません。 - 使い捨てのひげ剃り
こちらは主に男性の故人のために用意するものです。用途としてはメイクセットと同じで、闘病などの際に伸びてしまったお髭を整えることで、故人をより生前に近い美しい姿に近づけるために使用します。
3.必要情報の確認
臨終直後は慌ただしく、適切な判断も難しい状況に陥りがちです。もしもの時に慌てないように、事前に必要な情報を収集しておくことが大切です。
人が亡くなった際に届け出なければならないことは意外と多く、面倒な手続きというものはどうしても発生してしまいます。そんな時に面倒を任せられる業者の情報もこの機に集めておくことをお勧めします。
DIY葬であるからといって、そういった面倒を全て引き受けなければならないという決まりはありません。任せられるところは割り切って任せてしまう事もDIY葬の大事なポイントです。
必要な情報
- 火葬場の予約方法
火葬場で火葬を行うためには、基本的に自治体、または火葬場に直接出向き、当日の火葬予約を行わなければいけません。
火葬場という施設は一日に火葬を行う時間と回数が決まっており、毎日どこかしらの葬儀業者から予約を受け、火葬を行っています。
なので火葬をするためにはまず炉の空いている時間を確保する必要があります。
火葬の予約方法は火葬場によっても変わってきます。急な臨終から慌てて火葬について調べ、予約を取りに行ったら時間がすべて埋まっていた。
こんな事態にならないよう、事前の予約方法の確認をおすすめします。 - 現住所・本籍地の情報
人が亡くなった際はまず最初に役所に「死亡届」を提出しなければいけません。
これは記載されている人が死亡したことを証明する書類です。 死後7日以内に提出する必要があり、正当な理由なく届出が遅れた場合、戸籍法によって5万円以下の過料を徴収されます。
この死亡届に記載するため、現住所・本籍地の情報は必要になってきます。最悪の場合、これらがわからなくても役所は受理してくれますが、正確な情報を調べるために時間を必要としてしまいます。
余分な時間を取られないためにも、事前に現住所と本籍地の情報を役所で得ておくと良いでしょう。 - 搬送業者の情報
先に述べたとおり、DIY葬といっても、お葬儀に関する全ての準備・進行を自分たちで行わなければならない、といった決まりはどこにもありません。
中でも病院からのご遺体の搬送は、ある程度大きな車と人手を必要とします。加えて、親族の方の心にも大きな負担を強いてしまうことにもなりかねません。そんな心配を解決するのが搬送業者です。
搬送業者は搬送を専門としており、通常24時間対応しています。
料金は大体10km程度であれば、1.5万~3万円ほどが平均です。搬送のみでも行ってくれる葬儀社もあるので、距離・料金などを鑑みながら探してみることをおすすめします。 - ドライアイスの購入先の情報
搬送から火葬までの間、ご遺体の保存に最も適した道具がドライアイスです。ご遺体は、その瞬間から腐敗が始まっています。
親族にとっては、まるで眠っているかのようなご遺体に見えるかもしれませんが、内臓から順に状態が悪化していってしまうのです。
それを防ぎ、生前の姿を保つためにも、お体の冷却は必須です。
冷却ならば手に入りづらいドライアイスよりも、氷や保冷剤でいいのではないか。と思われるかも知れませんが、私達はドライアイスを強くおすすめします。
大きな理由としては2つ。まず、根本的な冷却の強さが段違いであること。そして排出する水の問題です。
ペットなどの小さなご遺体を冷却するならともかく、人の体を氷や保冷剤で冷却しようとする場合、大量の現物が必要になります。費用面でも物量面でもあまり現実的とはいえません。
また、氷や保冷剤が溶けた際に発生する水。これは腐敗の進行を進める原因になりかねず、濡れた布団などの片付けも必要になってきます。
それらの問題を解決するため、ドライアイスが即座に用意できるよう、備えておくことが肝心です。
ドライアイスは基本的にインターネットショップ、あるいは町の氷屋さんかガス屋さんなどで売っている場合が多いです。
実店舗での購入を考えている方は、近くのお店がドライアイスを扱っているのか確認してみると良いでしょう。近くにお店がなければインターネットでの購入方法・配送期間等を事前に調べておくことが大切です。
必要な物品
こちらの品々は買い揃える、あるいは集めるというよりは、家にあることを、ある場所を確認するものになります。
もし、用意できないかある場所がわからない、などという場合は購入するか代替品を用意する必要があるので早急な確認をおすすめします。
- 認印(シャチハタ不可)
こちらは死亡届記入時、役所への書類提出時に必要となります。この際、朱肉をつけて押すタイプの「三文判」でなければならないので注意が必要です。
朱肉が内蔵されているタイプの判子、「シャチハタ」は役所での手続き等には使用することができません。家に認印があるか、それが三文判であるか、を、まず確認することをおすすめします。 - 搬送用の車
故人が亡くなった場所が施設や病院である場合、そして火葬場へと移動する際、DIY葬では搬送用の車が必要になります。
ここで必要になってくる車は、椅子を倒して人一人を寝かせられる広さが最低条件となります。助手席等に座らせる、と言った方法はおすすめできません。適切に処置を受けたご遺体であっても、時として体液・点滴などが漏れ出てしまうことがあります。座った状態だと体の中の水分が重力によって下に流れていってしまうため、より危険性が増してしまうのです。なので搬送時に必ず寝かせられる車の用意が必要になります。
加えて火葬場に行く際は棺に入れた状態で搬送することになるので、車にも相応のスペースが必要になります。
もし、このような車のない場合、何パターンかの事前準備が必要になります。挙げられる解決法としては火葬場での納棺・搬送業者の手配などでしょうか。
火葬場での納棺は、故人をかさばる棺の中に入れずに火葬場へ運び、棺は組立前の状態で持参。火葬場にて準備を行う、という場合です。
しかし、これは火葬場の許可と協力が必須条件となるので、行なうためには事前の相談が必要になります。
搬送業者は先に述べた通り、搬送に関わる工程を全て業者に任せてしまう方法です。これは費用は掛かりますが、最も負担の少ない確実な方法となります。
搬送の際に用いる車は自分で所有している車でなければなりません。他人に借りたり、レンタカーを用いることはできないので注意が必要です。レンタカーは通常、貸渡約款にて遺体の搬送が禁止されているのです。
以上、主な搬送準備を並べましたが、最も状況にあった手段をお選びいただけたらと思います。 - お布団・シーツ
ご遺体を自宅に搬送した際にお寝かせする布団です。これは特に専用のものなどは必要なく、自宅にあるもの、故人の使っていた物をお使いいただくのが良いかと思います。
ただ、ご遺体の状態によっては体から水が出てきてしまったり、硬直で体が曲がってしまうこともあります。なので同時にタオルやクッション等も準備しておくことをおすすめします。 - 現金
病院などに支払い、火葬のための料金、そしていざという時に必要になったものを買い揃えるため、お金の準備は避けては通れない項目です。
DIY葬は通常のお葬儀とは比較にならないほど低コストなお葬式ですが、それでも出費は発生します。
お近くの火葬場の火葬料金、選別した「必要なもの」にかかる費用、これらを調べ、備えておくことを忘れてはなりません。
まとめ
DIY葬の手引き【準備篇】は以上となります。
くり返しになりますが、DIY葬といっても準備から実行までを全て自分たちの手で行わなければならない、という決まりはどこにもありません。
自分たちで可能な範囲を見極め、場合によっては業者の手を借りることも一つの手です。自身、そしてご家族の負担にならない組み立てを行なうことがもっとも重要です。
その計画もまた準備の中で大切なプロセスなのです。
DIY葬の手引き【搬送~安置篇】に続く。
DIY葬の手引き【準備篇】 DIY葬の手引き【搬送~安置篇】 DIY葬の手引き【火葬篇】 DIY葬の手引き【納骨篇】