本日はどういうお話ですか?
本日は、生きた証についてお話したいと思います。まず、武田先生は、生きた証をどう残されますか?
普段、生きた証を残そうなんていう考えをしないからね。
そうなんですか?
うん。全くないね。
例えば、作家の方とかなら作品が残るし、映画監督なら映画がDVDとかで残るでしょう。私だったら、残るとしたら庭だな。庭が好きだから。
なるほど。
植物だって2~300年は生きるでしょう。まぁ、その間自宅が維持されるのか知らないけれど(笑)
まぁ、生きた証を残そうと意識して生活はしていませんね。
先程、作家や監督であれば作品や映画が残るとのお話がありましたが、一般生活者の私たちは何を残せるのかと。考えてみたのですが、やはり子供が生きた証かなぁと思います。
考えればそうだよね。
そして、古代を紐解いていくと、大昔には偉大なる王という人が、生きた証として石を刻んだわけですよね。石というのは、歴史を跨いで、ずっと残りますよね。
確かにそうですね。
葬儀社で「千年残したければ石に刻め」という言葉が笑い話としてあるくらいなんです。
そして、御葬儀の書類というと、未だに和紙に墨というのが割と多いのですが。
和紙っていうのは、非常に長持ちするんだよね。
仰る通りなんです。百年以上残すために、これまで日本が残してきた形ということで、未だに和紙に墨を使っているんです。
なるほど。
お客様に先日、ボールペンって百年後もちゃんと残るのかいと聞かれたのですが(笑)まだ100年も歴史がないので、分からないですよね。
全くその通り!フィルムだって分からないからね。レコードなら残るかもしれないけれど…レコードは百年経ったのかな?
プレーヤーとか、再生できる環境も残っていないと難しいですね。
なので、時代を跨いで何かを残したいときに、石に刻むというのは、非常に理にかなっていると思うんですよね。
和紙の話で思い出したのですが、一色白泉さんという写経の第一人者の方が長野市におられて、この方の般若心経を写経したものが、東大寺の阿吽形の腹の中に収められたんですよ。十年くらい前かなぁ。
腹の中ですか、へぇ~。
つまり、和紙と墨だから、何百年も残るんですよね。
なるほど。
で、一色さんは般若心経を書くために、一年間一生懸命書いたんですよ。
魂を込めて書かれたんですね。
だから、それが400年後には「400年前の一色さんという方が書いたんだよ」ということになるんだろうねぇ。
そう考えると、凄い話ですよね。
和紙に墨という残し方といえば、一般の家庭で、おじいちゃんの代から書き留めていたメモなどが、御葬式の書類として見つかったりするケースを我々も目にすることがありますね。
あるでしょうね。
他にも、一般生活者の生きた証として残るものといえば、お葬式でいくと、遺影写真が残りますよね。変な話ですが、代が二代、三代といくと、おじいちゃんってどういう人だったの?というときに遺影写真があると分かり易いですよね。遺影写真以外の写真を見たことがないという方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?
そういえば、あるある。
ですので、最近は生前中に遺影写真をご自分で用意されるというお話もよく聞きますよね。
今は遺影写真というものがあるけど、私の頃は手描きの絵だったね。でも、よく似ているよね。
職人の方が描いていたんですよね。
そうそう、職人さんがいらっしゃったんだよ。
出来栄えに地域差がありそうですね(笑)
そうだね、ありそうだね(笑)
そして、お位牌も残りますよね。お位牌に残った戒名などは、墓石や本位牌に彫られて残ったり。
そうですね。
あと、生前中の姿を記録した映像を残しておけるようなサービスが、最近始まっているようでして。
へぇ~。
映像だと、実際のその人の声と姿を伝えられますよね。
亡くなった方の声を聞いたら、懐かしくなるだろうね。あとは、亡くなった方とどこか旅行へ行ったときのビデオとかをたまに見てみるとかさ。もうすぐ3月のお彼岸もくるから、そういう方もおられるんじゃないかな?
映像で残すことは、振り返るのにとてもいい一つの残し方だと思いますね。
そう思いますね。
あと、書籍などで有名な人の言葉を読むことがあると思いますが、自分のおじいちゃん、おばあちゃん、親が残した言葉って、また違った味わいがあるものだと思うんですよね。
確かに。
最近耳にすることが多くなってきましたが、事前書のようなものを自費出版される方がいて。
多いよねぇ。
それに関して、昨年の12月に「ライフチェスト」というサービスが始まって、にわかに注目を集めているのですが。
命のタンスということですね。
このサービスの何が注目を集めているのかというと、「辿る」と「残す」というプロセスがありまして、専門のインタビューをしてくれる方、ライターさん、カメラマンさんが来てくれて、一週間くらいかけてインタビューを行うんですね。
本格的ですね。
それを元に本を作成したり、家族へのメッセージなどを向こうでまとめてくれるんですね。
凄いですねぇ。
そして世代を超えて受け継げるよう、デジタルデータで百年は保管してくれるというサービスなんです。データを預けて、写真アルバムやムービーを孫の世代にも見れるようにするという。
なるほど。
そして、注目なのは価格なんですね。
結構、お高いんでしょう?
そうなんです。最もお安いもので250万円~という。
そりゃぁそうだよなぁ!一週間インタビューして、それを本人じゃなくて向こうでまとめてくれるんでしょ?
それに、来てくれる方たちが一線級の方たちなんですよね。某D社のような、広告代理店の方たちが始めたサービスで。
なるほどねぇ。
実は、大手のYahooさんでも「Yahooエンディング」というサービスを去年から始めていまして。ですので、かなり一般化してきているような印象がありますね。このサービスは、月に190円とかで、予め用意していた文章などを知らせたい人にメールで配信してくれたりするようです。
そちらは使いやすそうですね。
それから、最近は自分の「消し方」というのが注目を集めていまして。
消し方というのは、亡くなり方のこと?
様々なデジタルデータや社会的な繋がりであったり、インターネットに残っている情報を消すという。そういったサービスもYahooエンディングで取り扱っているようです。
あれって一生残っちゃうからね。
インターネットの海に残り続けてしまうという。これをどう消せばいいのか、話題になっているようですね。
そっか、面白いねぇ。
他には、ネット上の掲示板で、故人様と色々な関わりのあった方たちが思い出を話すというサービスが提供されるそうで。なるほど、近代的だなぁと感じましたね。
面白いねぇ。いかにして自分の生きた証を残すか、あるいは消すかと(笑)
そうですね。消し方という意味では「0葬」といって、自分を残さないサービスを、一定層の方が望んでいまして。先程、遺影写真とお位牌が残るというお話をしましたが、0葬というのはそういったものが残りませんし、お骨は散骨しますので、ある意味、自分を残したくない方向けの選択肢ですよね。
人生って単に終わるだけではないんですね。実際、我々の世代、70~80代はさ、そろそろ遺影用の写真を撮ろうかな、なんて人もいるんじゃないの?
そうですね。
川柳にあるんですよ。「遺影用、笑いすぎだと避難され」ってのが(笑)
笑いすぎ(笑)
いいと思うけどね(笑)いやぁ~面白いなぁ。
先程、一番長く残すには石に刻むって言ったでしょう?こんなお話もあって、小学生の頃って虫や草花が好きじゃないですか。これが小学校高学年、中学になると犬や猫に興味を持つようになるんだよね。
なるほど。
虫はすぐに死んじゃうでしょ。花はすぐに枯れちゃうでしょ。犬や猫は10~20年は生きるわな。
確かに。
で、大体30歳くらいになると、それが木に変わるって言うんですよ。庭に木を植えるとかしてさ。木はとっても長持ちするでしょう?
そうですね。
ところが、50歳以上になると石に興味を持つって言うんだよね。
へぇ。
つまり、同じ庭でも最初は虫に興味を持って、そのうち花になって、そして庭でペットを飼い始めて、その次に木を植える。最後は石に興味を持って…ということは、石ってずっと残るから、庭に残せるんですよ。だから、何かを残したいという欲求は人間に無意識にあるのかも知れないねぇ。
そのお話は、腹に落ちるところがありますね。実は、お葬儀の中でも様々な場面で石が登場しまして、魔を祓う道具としての石があります。
あ、そういうのもあるんだ。
例えば、昔は棺の蓋をして最後に釘を打ちましたが、未だに釘打ちに石を使っていて。
金槌で打っちゃいけないんだ?
金槌も最後に使いますが、立ち会う人には石を持ってもらって行いますね。
へぇ~。
石というのは、色々な意味合いで受け取られる場面がありますよね。
まぁ、石って凄く年月が掛かって出来ているわけだもんね。
そうですね。
本日は生きた証についてお話させていただきました。生きた証というのは日々生活していったうえで残るものですが、意識しながら生活していくのもいいと思います。
皆さんはどんな生きた証があるのでしょうか?ちょいと考えてみるのもよろしいんじゃないかね。これから残そうって考える方も多いかも知れない。
若い方でも、ブログのような、日記を残している方もいらっしゃいますし。
生きた証というと、我々の先代の文学者が書いた手紙とか、こんなふうに読まれているなんて本人は思ってもいないでしょう(笑)あれってプライベートの侵害にならないのかね?
かなわないでしょうね(笑)
あの世で、ヒデェことやってるって思ってるかも知れない(笑)そんなわけで、今日も篠原さんにお話しいただきました。
ありがとうございました。