2014.03.15「自然の脅威と弔いの原点」

おくりびとからのメッセージ

武田
武田

前回、篠原さんがお出になったのはちょうど1ヶ月前でございましたが、あの日は凄い雪で、大変でしたね。小海町に帰れなかったそうですね。

篠原
篠原

そうなんです。なので、長野に三泊して、という状況でしたね。

武田
武田

本当に、凄い雪でしたもんねぇ。

篠原
篠原

あの日、ラジオの日に夜中から降り続いた雪は、もう手に負えない位になっていて、番組も中継でされていたんですよね。

武田
武田

そうでしたね。

篠原
篠原

番組終了後、帰ろうと思いましたところ、高速道路が止まっていて、一般道の様子を会社に確認したところ、小海町も凄い雪で。従業員も車が出せなくて、歩いて出勤したり…。

武田
武田

うわ~。

篠原
篠原

結局、その日は危ないという事で、私は泊まりました。1日も経てば…なんて思ってましたが、随分長引きましたよね。

武田
武田

じゃ、結局長野に3泊したんだね。金曜日の夜と、日曜日の夜と。

篠原
篠原

そうなんです。金土日で。それだけ滞在していたにも関わらず、高速が開かなくて。新幹線が先に通ったという事で、長野駅に行ったんですが、駅の構内にも入れないという。

武田
武田

そんなに凄かったんだ。

篠原
篠原

情報が欲しくてTwitterを見ていたんですが、駅に入れない人とか、チケット求める人が4000人くらい詰めかけていて。

武田
武田

それは大変ですね。

篠原
篠原

その日は通常運行のハズだったのですが、結局午後には全休しちゃったんです。で、半ば強引に車で帰ったんですが、結局、都合6時間半ぐらい掛かりまして…。

武田
武田

ご苦労様でございました。

篠原
篠原

あの雪で、県内で非常に色々な事がありましたが、我々の業界的な出来事としては、火葬場に辿り着けないという状況がありまして。火葬場っていうのは山側につくられるので、雪が結構すごくて。

武田
武田

つまり、火葬を予定していたのにできなくなったんですね。

篠原
篠原

そうなんです。火葬場の職員やご遺族の方が火葬場へ向かえなくなってしまうという。前代未聞の状況ですよね。しかし、そうは言っても、ご遺体をそのままにしておけないですよね。

武田
武田

どうしたんですか?

篠原
篠原

佐久の地域では、火葬してお骨になった状態で葬儀式をすることが多いのですが、あの時は、お身体がある状況で告別式、葬儀式を行って、翌々日に火葬場へ行くという、特例的な対応をしました。

火葬場は2~3日止まっただけだったのですが、予約としては、後ろもう半月位の予約を引きずってしまうという。

武田
武田

非常に大変な状況でございましたね。ご遺族の方も大変だったろうね。

篠原
篠原

想定していないことですから、どうなってしまうんだろうという不安が募る状況だったと思います。

武田
武田

確かに、想定外ですからね。

篠原
篠原

ちなみに、物流もやはり止まりまして、ドライアイスが届かなくなってとても困りましたね。ドライアイスを作るには大型の機械が必要ですので、大体配送してもらうのですが、物流が止まってしまって…。

武田
武田

どう対応しました?

篠原
篠原

雪は沢山ありますから、あるところでは、ゴミの袋に雪を詰めて使ったり。

武田
武田

なるほど。気温も寒い時期だから良かったですね。

篠原
篠原

ちなみに、軽井沢のバイパスのところで立往生車両が出て、不幸なことに、その中でおよそ2日半ぐらい缶詰にされて、亡くなられた方もいらっしゃったんですね。

武田
武田

やっぱり、そういう方もおられますよね。

篠原
篠原

何と言いますか、非常に大変な状況でしたね。

武田
武田

小海も相当な雪が降ったってことだね。

篠原
篠原

そうですね。除雪を生業にされてる建設業者の方に聞いたところ、1番深いところで、1m60cmぐらい積もったそうで。

武田
武田

凄いね~!

篠原
篠原

いわゆるローダーと言われるもので雪をかいて、ショベルで部分的に雪を動かしてからかいたという。

武田
武田

雪がよく降るところではね、路肩のところにポールを立ててさ、後で雪かく人が分かりやすいようにしてあるらしいですよ。でも、そういうものもないから、雪かきをする人は大変だったろうね。

篠原
篠原

大変だったと思いますね。想定外のことだったので、そういったことも起きたわけですね。

武田
武田

本当に、そうですね。

篠原
篠原

色んなものが無くなったり、孤立してしまう状況がありました。お葬式の場面では、「コミュニティーの力」がキーワードになってくるのですが、あの大雪の時に、私の住んでいる小海町で、区会が力を発揮すると言いますか、区長さんが「元気ですか?」という声掛けを行ったり、雪かきが進んでない場所へ、「大丈夫かい?」とラッセルしながら向かう場面がありまして。

武田
武田

はいはい、ありますね!

篠原
篠原

こういった田舎の、顔の見える付き合いというのは、非常に安心を感じるような、ライフラインになるものなんだなぁと感じましたね。

武田
武田

区長さんもさ、そうやって助けに出向く時は必死の覚悟でしょう。深いところで1m60の雪なんですから。ご苦労さんですね。

篠原
篠原

本当ですね。他にも、小海町の親沢という地区の集落が、およそ3日間孤立したようなのですが、つばさのスタッフがそこに1名いまして、「大丈夫かい?」と聞いたところ、「全然大丈夫だ」と、意外な返答でした。いわゆる、備蓄野菜があるような土地柄で。お肉はなくても野菜や米はあるよ、という。生活力という意味では、凄いなぁと感じましたね。

武田
武田

親沢の話を聞きましたが、私共が小さかった頃ってコンビニとか全くないじゃない。次に出るいろは堂さんも鬼無里にあるでしょう。そういった地域の方は、冬は出てこられないような状況になるわけで、冬用の備蓄食料とかを冬が来る前に用意して、どんなに雪が降ったって大丈夫だ、みたいな体制でいたんだよな。昔の話ですがね。

篠原
篠原

そうですよね。

武田
武田

ところが、便利な世の中になっちゃうとさ、新鮮なものを食べようとか色々な欲が出てきますから。文明社会っていうのは、自然の驚異に対してとても耐性がないよね。

篠原
篠原

私も、電気に頼っているものが非常に多くて、電気が止まって、ヒーターがつかない、給湯器のスイッチが入らないようなことが起こるのではないかと、とても不安に駆られましたね。

ですので、ガスコンロやだるまストーブというものは、電気が無くても明るいし、お湯も沸くのでいいですよね。

武田
武田

そういった電気に頼らないものは大事ですよ。今、携帯用のガス装置があるんだけど、便利ですよ。こういうものはやっぱり、用意しとく必要あるね。

篠原
篠原

今回の件で、とても体感しましたね。

武田
武田

それとね、7人の侍じゃないけどさ、炭と七輪ね。いざというときに大事なんだよ、これが。

篠原
篠原

もし電気が止まったら、大変ですからね。大雪の一番の恐怖はそこでした。逆に、中部電力の皆様は、きっと電気が止まらないように、多大な努力をされていたと思います。でも、脆いな、なんてちょっと思って、ドキドキしていましたね。

武田
武田

例えば、夏に地震とかの災害があって、ライフラインの道路も寸断された場合、葬儀業界は本当に大変でしょうなぁ。夏ですから、ご遺体がどうなるのか、非常に心配ですよね。

篠原
篠原

本当ですね。東北の方で震災がありましたけれども、あの時は火葬するための燃料の重油の供給が追い付かなくて、火葬ができなくなってしまいまして。仮埋葬という形で、2年間という期限付き条例で土葬したんです。ショベルカーで大きく川沿いを掘っている映像を見た方もおられるのではないでしょうか。

武田
武田

火葬できないから一旦土葬か。被害者の方が大変多かったからね。

篠原
篠原

大変多い上に、水死に近い亡くなり方だと、腐敗も早くて。

武田
武田

なるほどね。

篠原
篠原

火葬するのが非常に近代的な弔い方ではあるのですが、設備も燃料も必要で、同時に弔える人数も限られていますから。そういった意味でも、特例的に仮埋葬されましたね。震災からちょうど3年経ち、ニュースの特集で取り上げられていましたが、仮埋葬したお身体が掘り出されて、改めて荼毘に付されたという方が、この期間に非常にたくさんいらっしゃいました。

武田
武田

そうだったんですね。

篠原
篠原

実は、土葬って手間が掛かるんですよね。3年もそのままにしておくと、地面が下がってきて、落とし穴状になったりしますから、墓守が適度にメンテナンスする必要があって。

武田
武田

なるほどね。

篠原
篠原

現在は想像出来ない方も多いと思いますが、昔は木材の棺にお入れして土葬すると、そこにぽっかりと空間ができちゃって。

武田
武田

その部分だけ空間ができちゃうから、ぼつんと落ちちゃうんだな。

篠原
篠原

ですから、仮埋葬としたのは、そういう事情があったんでしょうね。

武田
武田

そういうことか。篠原さんは、土葬を目撃した経験はありますか?

篠原
篠原

私は、目撃してない世代ですね。

武田
武田

そうなんだ。私は目撃した世代でね。私が小学校上がる前くらいかな、母の妹さんが若くして亡くなっちゃったのよ。その方の土葬風景を見たことがあります。穴掘って入れて、土をかけて土葬しましたね。でも、現在は土葬を見る機会がほとんどありませんからね。

篠原
篠原

現在、日本で土葬ができるのが北海道と山梨の一部しかないのですが。

武田
武田

あ、そうなんですか。山梨も?

篠原
篠原

山梨の甲州市だけ、条例で土葬を認めているようですね。

武田
武田

そうなんだね。

篠原
篠原

外国人用墓地として土葬を行えるようになったそうなんですが。日本で土葬が中々見れないのにも理由がありまして、火葬率が99.9%ということで、世界1位なんですね。公衆衛生にも則ってますが、日本は非常に進んだ弔い方をしていると思いますね。

逆にアメリカなどは、現在も宗教的に土葬の親しみが強くて。あちらの土葬は、大昔でいけば金属製の重い棺を使って、現在でも金属製のものが多く使われていますね。つまり、陥没状態にはならないんですよね。

武田
武田

金属製なんですね。モンゴルの方では「風葬」というのがありますよね。

篠原
篠原

ありますね。自然に還すという考えのものでしたよね。

武田
武田

そういった、自然にお任せしちゃおう、という国もありまして。今回のような大雪や非常時を体験すると、そういった原点を考えさせられることってあるよね。

篠原
篠原

本当ですね。改めて、おくりびとの原点といいますか、見つめ直しました。

武田
武田

はい。そんなわけで、大雪があって大変な状況でした。お話、ありがとうございました!

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