篠原さんは、お仕事柄、人生儚いと感じたことはありますか?
ありますね。人生って、歳を重なるごとに時間が早く進んでいるように感じると言いますけれど、星の瞬く瞬間に人生の時間が入ってるような…そう考えると、人生が儚く感じます。
私は60代後半で、本当に1ヶ月が早く感じますよ。つい最近寒い寒いって言ったと思ったら、すぐに暑くなったりさ。
そうですよね。
実は、この番組、今回でちょうど1年だそうでね。これについてだって、もうそんなに経ったのかぁと思ったもんね。
ちょうど丸1年になりましたね。あっという間でしたね。
ね~。
毎回、ドキドキしながら準備をしては来るんですが…(笑)
(笑)
本当に、早いものですね。
さあ、今日はどんな話になりますかね?
先月、命の行き先について、精神世界についてのお話をしました。地域、文化、宗教に関わらず、人間の命が最後に行き着く場所が、大きく4つに分類されるという内容でしたが、その後、どういうことなの?なんて聞かれまして。
(笑)
その話はまた追々、とは思いますが。本日は、命の行き先っていうと、精神世界の他に、物理的な行き先というのがありますよね。私たちの場合は、最終的にお墓という行先を思い浮かべると思いますが。
そうですね。
お墓も色々な行き先があります。先般ご紹介している海洋散骨や樹木葬といった自然葬の形や、納骨堂というものもありますよね。
長野市にもありますよ。納骨堂。
大変立派な納骨堂がありますね。他にも、宇宙葬なんていうものもご紹介したことがありました。
そうですねぇ。
本日ご紹介したいことがあって、聞き慣れない事例なんですが、命の最後に、キノコになるという。
そんな事例があるんですか。
「マッシュルーム・デス・スーツ」というものがあるのですが。
どういうもんなんだね?
全身タイツのようなところに、キノコの菌繊維が織り込まれておりまして。
へぇ~。
人間の組織や細胞や老廃物を栄養にして、最終的に自分の体がキノコになって自然に還るという自然サイクルなんです。
(笑)
なんだそれ(笑)と思った方もおられるでしょうけれど、実は大変合理的な考えなんです。何故かというと、人間の体って毒素が集積する場所でもあるんですよね。
そうなんです。
代表的なのは、BPA。缶詰めとかの内側に、防腐とかの用途で塗ったり、プラスチックの原料になるものらしいですが、このような物質が、6歳以上で体内に必ず93%も検出されるという。それから、お魚を食べれば水銀とか、銀が体に蓄積されたり。実は、人間の体統計によると、219もの有毒な汚染物質が体に蓄積されていると言われているんです。
凄いですね。
実は、その有毒な物質というのは、火葬をすると大気中に拡散されるんです。
そうだよね、放出されちゃうよね。
こうして、人間が生きて、生活してきて、最期に環境に影響を与えるようではいけないということで、毒素のサイクルを止めようという考えがアメリカでありまして。で、現在開発されて提供が始まっているのが、マッシュルーム・デス・スーツということなんです。
それって、毒素がキノコに変化するってことなんでしょうか?
そうですね。率先して体が腐敗するような内部構造になっていて、腐敗を栄養にして、体の毒素とかを分解しながらキノコが育っていく仕組みになっているようです。
実際に、もうやられてるんですか?
はい。そのようです。
亡くなった方にマッシュルーム・デス・スーツを着せて、土葬するんですか?
そうですね。アメリカで4年ほど前に発表され、当時はまだ研究途中でしたが、その考えに共感した方が、自ら望んで体を提供してくださり、現在実用化できるようになったようです。
面白いものですね。これは、科学的に全て正しいのかしら?
体内で検出される219種類の有毒な物質に関しては、ほとんどのものが分解されるそうですね。深い段階での情報はまだありませんが。人間がキノコになって、そして影響や負担が少ない形で大地へ還るという新しい取り組みのようです。
例えばさ、人間が作り出した、地球上で分解されないような物質ってあるじゃないですか。そういったものがなかった時代も、やっぱり人体ってのは、それだけ毒素含んでたのかね?
含んでいたと思いますね。牛や豚など、家畜でも牧草に含まれている物が蓄積されたりして。
あ~、そういうことね。
昔から、人間が環境へ様々な影響を与えてきたということですね。
それが現在に亘って影響を及ぼしているというのは、良く分かりますね。
そうですね。
今、人体って腐らないらしいじゃない。つまり、我々が食べている食物に腐らない物質が含まれてるから、それが体内に蓄積されて、昔みたいに簡単に腐敗しないって話も聞いたことあるんだけど。
見た目の腐敗は進みますが、一部の臓器でそういう現象が起きていることもあるかとは思いますね。
そうですよね。
腐敗っていう意味でいきますと、日本では腐敗についてそこまで問題にならないのですが、アメリカでは、生の体を保持したまま、お体が綺麗なままというのが、宗教の教義上で、結構大切な要素で。
なるほどね。
それで、エンバーマーという葬祭資格者が、ご遺体に透析のような形で充填材、防腐剤を体に入れるというのが、一般的なおくり方なんです。つまり、アメリカの一帯というのは、日本よりもさらに環境への影響が大きいと言われてるんですね。
そういうことか。したがって、マッシュルーム・デス・スーツも、そういう背景があって出てきたと。
仰る通りです。これ、キャッチコピーが「Recycle Me」って言うんです(笑)
私をリサイクルしてくれって?(笑)
どう解釈していいか、という感じですが。
なるほどね~。
これが非常に新しい事例で、まだ始まって2年ほどというお話でした。
他にも、これはヨーロッパ。スペインの事例で「バイオス・アーン」。日本語に直訳すると、命の壺という。
どういうものなんですか?
命の壺、いわゆるポットのような形をしてまして。
まさにポットですね。
環境に優しそうなバケツのような…円錐状の…。
インスタントラーメンのカップあるじゃないですか、そのカップをでかくしたような感じだね。
あっ!そうです!これ、人用とペット用がございまして(笑)
へぇ~。
スペインバルセロナのデザイナーの方が企画したもので、世界28カ国、7000箇所以上で提供されているようです。ポットに6種類の植物の種と、その植物の生育に必要な栄養素が最初から入っているそうで。
なるほど。その中にお骨を入れるわけ?
そうなんです。火葬してある前提で、ということで。
なるほど。
人骨に含まれるカルシウムなどの栄養素を受けて、植物が生育しやすい環境を作ったポットなんです。およそ7~8年掛けて、段々と根が張っていくようになってまして。
へぇ~。
その容器の外から木の根が生えるようになっていて、最終的には6種類の樹木の中から一つ生えてくるようになっています。松、銀杏、楓、オーク、ブナ材など。自分の命が目に見える木に変わっていくという。
オーク材って言えば、ワインの樽に使われるやつですね。これを樽に使う人がいたら、何か気持ち悪いね~(笑)
原材料を考えるとアレかもしれないですけど(笑)
あ、これ、105ドルって書いてあるじゃない?
そうなんです。つまり、10,000円ちょっとで購入できるんです。日本でも取り寄せは可能です。
ほぉ~。
ただし、日本で実施するには越えないといけない法律がいくつもあって、現実的ではないですね…。
まぁ、今まで考えられなかった、ご遺体をそういう形で弔えるということが可能になったって、凄いことですよね。
本当にそうですね。タブー視されていた時代から見ていくと、現在はここまで理解が進んでいるのかと思いました。
驚いたねぇ。日本では、お墓の場所の桜の木ってのは、非常に綺麗に咲くというような話があるじゃないですか。こういうのも、こういった考えの一種なのかもしれないね。
類似した話は、本当に様々な文献で出てきますよね。人間は、ある意味で自然サイクルの一部ですから、その意味では、木にとって良い影響があるのかも知れないですよね。
今日は大変に珍しい、世界で起こっているお墓事情についてのお話をしていただきました。ありがとうございました!